7章5-1<コラム~「本当はこんなに大事な調達・購買」>

・モノを買う仕事

オフィス全体の冷房が切れた音がしました。その静寂に急かされるように書類を整理。パソコンの電源を落としながらふと目をやると、時計の針はいつの間にか翌日に日付を変えていました。

昔は何をやっていましたか――? そう訊かれると、いつも通り答えます。

「モノを買い続けていました」。

社員には2種類の人がいます。「お金を稼ぐ社員」と「お金を使う社員」です。ただし、これは「稼ぐ社員」と「稼げない社員」という意味ではありません。ひとつの企業体のなかで、「お金をお客様からもらってくる」役割の社員と、「お金をお取引先にお支払いする」役割の社員がいるということです。

前者は、営業部門に代表され、後者は調達・購買部門に代表されます。では、調達・購買とは何か? それは、外部からモノを買い付け、その対価を支払うことです。例えば製造業の調達・購買部門であれば、自社製品に組み込まれる部品類の価格を交渉し、納期を必死になって追いかける仕事がそれにあたります。

これまで1万円だったところを9000円にすることで企業の利益向上に寄与する。納期を守ることで、生産遅延を防止する。それらの役割を、調達担当者は企業から期待されています。

すぐれたメーカーでも経常利益率は5%ほどです。もし、売価1 0 0 0 円の製品があるとすれば、材料費・購入部品費・外注加工費などの外部支出費が700円、その他経費が250 円で、やっと50 円が利益として残ります。調達・購買部門が外部購入費を50 円下げることができれば、直接のコスト発生なしに、利益率を倍にできるわけです。

売上高が伸びない時代にあって、やむなく調達・購買部門に注目されたのが実際のところです。とはいえ、これまで調達・購買部門を強化してこなかった多くの企業にとって、「売上高を伸ばす」のではなく、「外部支出を減らす」ことによって利益を倍増させるという発想は、まさに「コロンブスの卵」と受け止められています。

かつてはサプライヤを脅して価格をムリヤリ下げたり、あるいは、さも安くなったかのように見積書をあらかじめ高めに出してもらったりと、調達・購買にはある種のグレーさあったことは否定しません。

よくあるジョークに「きみが配属されるところは、コンドームだ」というものがあります。「無いに越したことはない。ただ、あるなら存在感は薄いほうが良い」と。それが調達・購買部門だというのです。物品の注文のためには調達・購買部門がなければいけない。ただし、余計なことは考えず、注文書を書き続けて、ただただ価格交渉をしてくれたらいい。そんな侮蔑が感じられました。しかし、そこから十数年たった今、調達・購買部員にはコンドーム以上の、プロフェッショナルとしての能力が求められています。

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