6章6-2<セクション4~コラム②「CSR調達とその事例」>

・ブランドイメージの維持

自社製品や顧客の製品が特定のブランドをもっている場合は、CSR調達はいっそう必要性を増します。

前節で取り上げたナイキの例では、サプライヤにおける児童労働が問題になりました。ご紹介した児童労働の実態を示す写真には、ナイキのスウッシュマークも写っていました。サプライヤの再委託先(いわゆるティア3サプライヤ)までもブランドマークを扱う場合は、さらに深い階層まで管理するCSR調達が必要です。

ここで、ブランドイメージの維持と向上にからめて、日本企業でCSR調達を実践している企業として、ファーストリテイリング、と同社が展開するユニクロをご紹介します。ユニクロのホームページにある、サプライヤ(「生産パートナー」と表示)に向けた「コードオブコンタクト」において、企業として取り組むべきCSR調達のポイントを列記しています。

  • 法的要求事項
  • 児童労働
  • 強制労働
  • 抑圧及びハラスメント
  • 差別
  • 健康と安全性
  • 組合結成の自由
  • 賃金と諸手当
  • 労働時間
  • 環境保護
  • 文書化とコミュニケーション
  • モニタリング及び本コードオブコンダクトの遵守
  • 是正措置
  • 下請業者及び家内労働者
  • 透明性及び誠実性

そして、ファーストリテイリングのホームページでは、サプライヤの監査結果も公開されています。興味深いのは、調査結果で「評価E:即取引見直し対象に値する極めて悪質なかつ深刻な事項」が指摘されたサプライヤがいくつもあり、その指摘内容と、結果として取引を終了させたと明記している点です。

このホームページには具体的な改善事例も明記されています。果たしてユニクロにたいするイメージが、実際に監査結果を読んだあとにあがったでしょうか、さがったでしょうか。もっといえば、ユニクロ商品の購入をこれからやめようと判断するに至ったかどうかです。

公開されているE評価の例は、児童労働と、虚偽報告です。まさにナイキで問題となった例、そして虚偽の内容は違いますが、某大手ファストフードチェーンの例に近似した内容です。ポイントは、みずから公開するか、それともマスコミなどの第三者からの告発によるかの違いです。

調達・購買活動も含むCSR活動のポイントは、モニターと公開、そして改善活動です。企業のイメージを損なう事象があった場合に、それを隠すのか、それとも公開するのか。CSR調達の実践でも、最初から100点を取る必要はありません。現状を掌握し、要すれば公開して、問題点へ改善をおこなう。われわれが日常的におこなっているコストや業務内容にたいする改善活動と、CSR調達の実践はなんら変わりません。

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