7章1<ケーススタディ⑦~調達・購買部門の社内地位が低く、戦略性もない>
私は建設資材を生産している企業の調達担当者だ。もともと経理部門に配属されたものの、のちに調達・購買部門に異動となった。経理部門にいたときは、調達・購買部門はたんに注文書を発行する役割としか認識していなかった。しかし、それにしても実際に身を置くと、想像よりもひどい。
まず、これまで他部門から年配の社員が移動してきた風土もあって、平均年齢は高い。若返りを狙って、私をはじめ何人かの30代社員もいるものの、まだまだといった状況だ。そして驚いたのが、各社員ともに質問してみても、「調達・購買部門をどうしたい」と考えをもっていない。あきらめもあるのだろうか。
多少、元気のある社員もいる。ただ、彼らは、その元気を別の方向に使っているようで、電話でさかんに「こんな納期で注文できるか」と生産管理部門の若手を叱ったり、「わけのわからない図面を書くな」と開発・設計部門の後輩に怒ったりしているだけだ。
対処療法ではなく、もうちょっと知的に、そして仲良く他部門と連携しながら改善できないものか。いまの構図は、「誰からも期待されていない調達・購買部門」と、「できるだけ調達・購買部門には関わらないようにしている他部門」がいる。
もうちょっと調達・購買部門の地位を向上させて対等な立場にはできないものか。
ん……と私はいつもここで立ち止まる。しかし考えるに、調達・購買部門が何を実現したいかといった目標もなければ、地位があがりようはない。そもそも地位があがったって、なにをしようというのだろう。
思えば、その違和感はいまにはじまったものではない。配属のとき、私をはじめとする、元他部門組が集められた。調達・購買部長は「これからがんばってください」といってくれたものの、次に「多彩なバックグラウンドのみなさんは、調達・購買部門で何ができるか。一緒に考えていきましょう」と笑ったのには驚愕した。
というのも、呼び寄せたのは調達・購買部門のほうで、そもそも何をやってほしいか決めておくべきものではないか。調達・購買部門でやりたいことがあって、それにあてはまる社員を集めたのではなかったのか。もちろん部長は悪気なくいってくれたとは思うものの、初日から暗くなってしまった。
そして机に座ると、次々に電話がかかってくる。社内外から納期遅延調整の依頼、あるいは品質トラブルの連絡だ。気づくと、昼食も忘れて火消しに没頭していた。さらに気づくと、挨拶まわりのサプライヤと面談の時間だ。こうやって、18時までがいつの間にか埋まっていく……。
実務に翻弄され、さらに気づくと数年が経っている、というオチなのか。元他部門組の部員はもはや忙しさと諦観のなかで流されているように見える。こういう社内下請けの立場でいいのか。理想もない状況でいいのか。
行き詰まり感。私はどうすれば良いのだろうか。