5章3-4<セクション2~①グローバル展開に伴う調達部門の役割>

・調達にかかわる意志決定

グローバル調達の具体的な三つの取り組みは、企業リソースの調達・購買部門への投下するレベルが、(1)から(3)になるにしたがって大きくなります。

(3)の場合は、国ごと、あるいは拠点ごとに調達・購買機能を持って実現されます。裏を返せば、各拠点で同じ購入品への取り組みを別々におこなう事態が発生する可能性があります。

この場合は(1)から(3)の進展とともに、拠点間での情報の共有化を進め、円滑で効率的なグローバル調達を実現するために、最適な意志決定をおこなう仕組みが必要になります。全社での社内リソースの効率活用を踏まえた意志決定を行います。

これを文化や商習慣の異なる国に所在する拠点との間で適切に実施するのは、非常に困難です。ここでは、調達・購買部門間での意志決定に関するポイントを三つお伝えします。

 

  1. 同じスタートラインの維持:もともと日本国内に拠点を持っていた企業が、海外に製造なりIPOの拠点を設ける場合、購入可能なサプライヤの絶対数は日本が多い状態から始まります。加えて、国内のサプライヤには、長年の経験と取引の実績もあります。日本と海外の二極での調達活動が開始したばかりであれば、時系列的に日本のサプライヤに優位性が出てしまうのはやむを得ません。しかし、二極での調達体制を機能させるのであれば、同じタイミングで調達活動をスタートさせます。「日本でダメだから海外で」といったスタンスではいつまでたっても調達の中心が日本となりますし、海外拠点の調達・購買部門のモチベーションにもマイナスの影響を与えます。同じスタートで、同一条件での比較検討活動が必須です
  2. 調達・購買に関する基本情報の共有化:日本企業ですからやむを得ない面もあります。しかし、日本側の調達内容は、海外拠点と過不足なく同じレベルで共有が図られなければなりません。したがって、図面やバイヤー企業の要求仕様書は、最低でも日本語と英語の併記、過去の調達データも同じように最低限でも英語で表現します。「最低限でも」とは、できれば進出先の言語が、現地のサプライヤには一番理解しやすいのです。
    またこういったデータは、業務支援システムで時間差なく日本と進出先拠点の調達担当者に提供されなければ、円滑な二極もしくはそれ以上での調達活動は実現できません。日本企業であれば、まず現地へ言葉で歩み寄らなければならないのです
  3. 意志決定プロセスの共通化:これまで述べた1)2)の条件をへて、日本と現地のサプライヤから見積書が入手できたとします。ここからが問題です。日本と進出先の双方が納得する意志決定をおこないます。もちろん、日本と進出先の2社購買との決定もアリです。決定内容に双方が妥当性を見いださなければなりません。日本側のこれまでの経験とつきあいがあるから、といった理由だとしても、戦略的にこれは日本で決定するとの明確な理由を進出先の調達・購買部門に提示して納得してもらいます。もっとも避けなければならないのは、進出先の調達担当者が、どんな理不尽な決定であっても、日本側には異論が唱えられないと「あきらめ」でしまう状況です

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