1章-6-1<セクション4~セオリー③長期的:正しい集中/分散調達を実行する>
さて、新規サプライヤを発掘したとしても、それで終わりではありません。もしかすると、切り替える、あるいは二社発注によって大幅なコストダウンにつながったかもしれません。しかし、繰り返すと、コストダウンの肝要は、サプライヤを“揺さぶる”ことにあります。
さらに発注量を増やしたり、あるいはふたたび違うサプライヤに切り替えたり、または分散調達に戻したりといった活動が必須です。集中購買とは、サプライヤを集約するといった意味から、発注窓口を集約するといった意味から、権限を集約するといった意味まで分岐します。しかし、どの意味であっても目的はコストダウン(効率化)にあるのは間違いありません。ここでは、正しい集中/分散調達についてお話します。
(1)集中購買とは
集中購買とは、なにかを「まとめる=集中」させ、購入価格を安くする取り組みです。ここでは、「バイヤー企業の要求事項やサプライヤの提供内容を、さまざまな手法によって共通化・標準化・集中化し、双方のリソース活用の効率性を高めメリットを双方の当事者が享受すること」と定義します。集中購買は、1950年代に出版された調達購買本にもコストダウンに効果的な手法として紹介されています。
集中購買を考える際に、まず前提条件として忘れてはならない点、それは調達・購買部門なり関連部門が、集中購買の実行を意識して、具体的に「まとめる」行動を起こす点です。集中購買を実践する大前提となる「まとめる」は、自然に行なわれるものではないのです。これはあたり前の話ですが、この「まとめる」際の行動を意識していない場合が多くなります。こうなってしまうにも、理由があります。
企業の成長に合わせて、企業規模が拡大していくと、企業内では組織化が実践されます。多くの企業における調達・購買部門も、社外から事業運営に必要なリソースを確保する機能に専門化しています。これも一つの機能の集中化になります。これまでの事業運営の中で、集中できる部分はすでにおこなわれていると考えるべきなのです。調達・購買部門でも、比較的簡単に実行できる「集中化」は既に行なわれています。例えば、「購買額の80%を、総取引社数の20%を占めるサプライヤから購入している」といった状態も、20%を占めるサプライヤに集中して発注しているといえるのです。
そのような状況の中で、新たに「集中購買」を唱えるのは、新たに「集中する」対象を設定し、集中を実現させる取り組みをしなければなりません。従来から取り組まれている集中購買ではありますが、実行して効果を得るのは簡単ではないのです。
集中購買の実行ポイントは二つです。
- まとめるための手段は、調達・購買部門だけでなく関連部門や経営者層を巻き込んで、効果的な手段を用いなければなりません。
- 集中購買を宣言して価格を下げてもらったのにまったく数がまとまらない場合、その効果は限定し、継続性を生みません。サプライヤ側の損益を悪化させ、発注側の損益を良化させるのみです。実際に集中することで売上増など、サプライヤ側にもなんらかのメリットの享受してもらう必要があります。