1章-5-4<セクション3~セオリー②中期的:対抗サプライヤを探す>
④正式監査
では、監査ではサプライヤ工程の何を見ればよいのでしょうか。生産管理部門や品質管理部門は、もちろん専門的な内容をチェックすべきでしょう。いっぽう、調達部門としては、さきほどのリソースという点からチェックしていきます。難しく考えないでください。工程を確認しながら、「発注をお願いするに足るところか」を見るのです。
この節では、寡占状態にあるサプライヤの代替として、セカンドサプライヤを探す文脈でお話しています。しかし、これはセカンドではなく、新領域における新規サプライヤ発掘でも同じです。
サプライヤを信じることは大切です。しかし、彼らが話すセールストークを鵜呑みにするのではなく、しっかりと工程やリソースを確認すべきです。
さて、工程を監査する際に、ひとつ頭に入れておいてください。工程を通じて、サプライヤの事業内容を確認する場合、重要なポイントの一つが、単一事業サプライヤか、それとも複数事業サプライヤかとの点です。サプライヤ側から見れば「事業」となりますが、調達担当者としては「事業」を「リソース」と読み替えてください。バイヤー企業側からみて、複数のリソースを有するのか、それとも単一なのかを見定めることが必要です。
上記の例は、製造業に必要な部品を、製造業であるサプライヤA、Bから購入する場合の、サプライヤの持つ「リソース」を比較したものです。この例で、サプライヤA,Bから製品としてのアウトプットに差は存在しません。かえって、価格だけを比較するとサプライヤAの方が安価です。
しかし、なぜかバイヤー企業の開発・設計部門はサプライヤBばかり指定する、とします。いろいろ調べてみると、サプライヤAには、必要な部品の図面をバイヤー企業側で製作して提示しなければならなりません。しかしサプライヤBには、完成した部品の仕様と、制約条件だけを連絡すれば、サプライヤ側で作図して、ものづくりをおこなって納入してもらえるわけです。設計機能というリソースの有無で、サプライヤが選定されていたことになります。これが寡占の原因であり、代替サプライヤ参入の支障だとわかります。
このケースは、単一製品における全工程に対して、カバーする割合の問題です。このような情報を確認するためには、購入する製品が、どのような製造工程をもって生産されるのかをあらかじめ調達担当者が理解しているべきです。そして工程監査を通じて、サプライヤの実力をしっかりと見極めるべきです。