6章2-1<セクション1~社会の一員としての調達活動>

・サプライヤとの対等な立場

調達・購買部門は、企業内で唯一「顧客」である特異な仕事です。社内的なポジショニングは関連部門となんら変わりありません。しかし外部からは、明らかに顧客として扱われます。

サプライヤからの顧客満足度を測るアンケートに回答した経験を持つ調達担当者も多いでしょう。そして、日本で「顧客」とはあがめ奉られる存在です。とても残念ですが、そんな考え方を「顧客の立場であればサプライヤに何をいっても許される」と受け止め、傲慢な態度で仕事をする調達担当者もいます。

正直に申せば、いまだに驚くような態度をとる調達・購買部員であふれる企業もあります。お里が知れます。顧客の立場に安住してはなりません。社内の人事管理のなかで、たまたま調達・購買部門に配属されたに過ぎないのが事実です。

日本の商習慣としての顧客の立場は、両社の繁栄のために徹底活用すべきであって、偉そうに振る舞うための舞台装置ではありません。

調達担当者個人への貢献に振り向けられてはならないのです。あまりにも当たり前とはいえ、あえて章の冒頭で強調しておきました。

 

・調達・購買業務における法令の遵守

そのうえで、法令の遵守に話を進めます。近年の遵法意識の高まりによって、企業活動による違法行為発生の影響は、経営を揺るがすほどのインパクトを持ちます。近年、調達・購買部門にとっても業務を進めるうえで関係の深い法令は、グローバル化の進展によっても自国以外の法令対応を含め増加傾向にあります。

調達・購買部門の業務でとくに関わりのあるものは、次の五つです。

  • 契約、債務不履行、売買契約、請負契約、みなし規定(民法、商法)
  • 不公正な取引方法の防止(独占禁止法)
  • 不正競争防止(不正競争防止法)
  • 下請法(下請代金支払遅延等防止法)
  • 課税文書(印紙税法)

もちろん、上記以外でも、社会規範や慣習、海外での法令遵守も含めて、さまざまなルールを守りながら業務を進めなければなりません。これら、調達・購買業務に関連する法令遵守を怠れば、罰則は企業に科せられます。最近では、法令を守らなかった場合、企業名を公開し社会的な制裁=企業ブランドを傷つけるといった、影響が計り知れない場合もあります。

調達・購買部門では実務的に、顧客から遵守を要求された内容を守っている、あるいは問題ない旨を文書で宣言しなければならない場合があります。この場合、もっとも避けなければならない状況は、顧客の要求事項を十分に理解しないままであやふやに対応し、結果的にリスクがバイヤー企業に残ってしまう事態です。しっかり理解したうえで、どのように返信するのか組織として対応していきましょう。

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