5章4-1<セクション3~②国内サプライヤへの対応>

・国内サプライヤの体力減少

さて前節では為替の見極めまで実施しましたが、グローバル化が進んでいくと、逆に国内に問題が生じます。海外進出をともにおこなうサプライヤが多ければ問題ないものの、日本の中小企業はほとんど海外進出できていません。となると、”置いてきぼり”になる日本サプライヤが増えていきます。企業というのは、ずっと生産量や売上高を増やし続けるのが健全な姿ですから、右肩下がりはさまざまな障害を引き起こします。

よく見られるのは次の現象です。

 

1. 量産力の衰退

一部の地域(中部地方)を除き、製造業の「量産力」が低下している。量産する顧客が少なくなったのが先か、対応できるサプライヤが少なくなったのは、さまざまなケース有り。しかし、量産段階になって、品質維持のできないサプライヤが増えてきた

 

2. 長期契約を希望する企業に対応できないサプライヤの増加

当初数量を提示し、将来的に10年~15年間、生産数量は5年目以降、当初数量の3倍になる見積依頼をおこなったが、明確に10~15年先までの計画を提示できるサプライヤが、日本ではきわめて少なく、単年度契約を前提とした見積提示しかできない

まず「1. 量産力の衰退」は、国内サプライヤと話していると「少量多品種」「短納期」「低コスト」の3点を喧伝するケースがあります。労働コストの違いから低コストを志向するのではなく、むしろ高付加価値製品を販売せねばならないところです。しかし、体質は変わらずに、かつてからの売り文句を繰り返し、じわじわと沈んでいく様子が見て取れます。

また「2. 長期契約を希望する企業に対応できないサプライヤの増加」は、10年と言った長期的な契約を締結するために必要な手立て、あるいは見積書を作成するための具体的な方法を知りません。明確な数量が提示されているわけで、前提条件としては、経営に関するあらゆる方面から検討できるはずです。

しかし、サプライヤから返ってくるのは、単年度の見積り単価を10年分コピーしただけのものか、もしくはよくわからないリスクをなんでもかんでも盛り込んだグローバルでの競争力のない見積り兼提案書です。

そういったケースでも、日本企業は、初期段階では社内設計者から技術観点から評価されるのも事実です。しかし、技術力や品質管理能力で勝ち残っても、次の段階でふるい落とされつつあります。

かつて「良いモノを作れば売れる」といわれました。事実、著者が勤務していた企業では、技術系出身の幹部が最高のモノづくりを志向し、良いモノさえ作れば、あとは自然に売れていく時代でした。卓越した機能、デザインと、適正な売価を設定すれば、欲しい人が群がって買いにきてくれました。

しかし、良いモノが存在すると消費者が知らなかったらどうなるでしょうか。また、「そこまで高品質なものは不要」だと割りきったらどうでしょうか。どんなに優れた素晴らしい良いモノであっても、世の中にその存在が知られていなければ、売れるはずもありません。それに、消費者が実感としてわからない高品質ならば意味がありません。

日本企業に欠けているもの、それは製造を直接的でなく、間接的に支える企業内機能でしょう。たとえば前述の例では、経理・財務部門や原価管理などが機能せず、またトップの判断もなかったために10年~15年の確定した仕事を失ったのです。

ところで、著者の聞いた企業では、調達担当者が技術力、品質管理能力の優秀な国内サプライヤに、ファイナンス理論をベースにした見積作成方法を教えているそうです。サプライヤの、営業でなく社長や経理部門の担当者と打ち合わせを重ねています。国内モノづくりの強化の意味で、調達・購買部門の役割は大きいのです。

ところで、そのようなサプライヤ指導のほかに、産業の空洞化にたいして調達・購買部門ができることはあるでしょうか。空洞化を防ぐために調達・購買部門ができること、また空洞化の犠牲者とならないための施策を探ります。もしよろしければ、「産業の空洞化」は悪いのか、という観点を忘れずにお読みください。

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