調達原論3【25回目一サプライヤー決定と通知】
25「サプライヤー決定と通知」
バイヤーの意思の結晶としてのサプライヤー決定
結婚相手を選ぶとき、そこには直感と理論化できない一種の「賭け」のような思い込みが作用します。しかし、サプライヤーを選定する際に必要なものは、定量的な評価です。
サプライヤーを決定する軸はいくつもあります。コストが安価であること、品質レベルが高いこと、そして納期・技術力に問題がないこと。それらにいくつかの要件を加え、QCDDPEMと表現することができます。
なんだか多数の評価軸が存在し、案件ごとにこれらの相対比較をするのは「面倒だ」という声も聞こえてきそうです。QCDDPEMといっても、購買行為のすべての局面で必要であるわけではありません。戦略構築のところでお話ししたように、都度最適購買の場合はC(価格)だけで決定することが一般的ですし、その領域に対していちいち全評価軸を調査するわけではないのです。大型案件であったり、一見するとどのサプライヤーであっても相違がないように思えたりするときにQCDDPEM評価が必要になります。
ここで、第三者がサプライヤー評価をした資料を見る際にとても大事だと私が思うことを述べたいのです。それは、真に絶対的で定量的な評価など存在しない、ということにほかなりません。よくQCD評価によって、正しいサプライヤーを選定できると信じている人がいます。ただ、その「正しさ」とは人の数ほど存在するものです。
それは、QCD評価の得点づけや、そもそもその評価軸を採用した時点で、その評価者の意思が介在していると思うべきということでもあります。QCD評価を恣意的にしようと思えば、いくらでもできます。特定のサプライヤーを高評価しようとすれば、いくらでも理由をつけることができるのです。だから、若いバイヤーはQCD評価そのものが、資料作成者の思想と仕事観の結晶と思いながら仕事にあたれば、その意図や、あるいは自分が作成する資料がどのような意味を持つかが理解できるでしょう。
サプライヤーを決定した後は、通知とともに採用しなかったサプライヤーに必ず連絡することが大切です。他者の行為を無視することほど、侮辱的なことはないのですから。