調達原論2【14回目一歩進んだ調達業務改善】コスト抑制とコスト削減

コンサルティングをしていると、たまに異常値に出くわす。「コスト削減実績▲30%」とあった。よく見ると、基準値がサプライヤからもらった初回見積書の価格だという。なるほど、最初に高く出してもらえば成果が捏造できる。

ただしこの例は極端でも、価格を下げれば何でも「コスト低減」として評価している企業はたくさんある。実際の調達金額を安くしたのか、高くなりそうなところを抑制したのか、では意味が全く異なる。これからは実際にP/L(損益計算書)に影響を与えるか否かで、二つの切り分けを実施せねばならない。

そこで使える概念はCRとCAだ。これはコスト低減(Cost Reduction)、コスト回避(CA: Cost Avoidance)の違いだ。CRは「100円で買っていたものを90円にすること」であくまで実績値からの減額だ。CAは「120円で買わされそうとしていたところを、110円で買えるようにすること」だ。

CAをCRと同じく評価しようとすると、そもそも120円は実績ではないからなんとでもいえるようになる。しかし抑制も立派な業績だから評価はしてあげたい。その意味で、二者をわけて評価すればいい。

初回見積書の価格から真剣にがんばって抑制したならば、それはCAとしての評価となる。なお、成果の偽装をどうチェックすべきか。不正を犯す調達・購買担当者の特徴としては、CRと比してCAが異常な額になる。また前任者と比べて、そして他のバイヤーと比べて、自己の成果を過剰に演出するために、CA額を「創出」する場合もある。そういうことに注力しているのは、微笑ましいともいえる。

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