調達原論3【36回目一CSR調達、グリーン購買、J-SOX】
36「CSR調達、グリーン購買、J-SOX」
新たな潮流と、調達・購買の普遍
調達という行為に対して、時代性・社会性の色合いを帯びた要請を満たしていかねばなりません。企業活動とは自社とお客だけで完結するものではなく、多くの部品を外部から調達しています。サプライヤーとの良好な関係を構築することや調達する製品に買い手としても責任を持つことで、企業が市場のなかに存在する意義を証明できるのです。
これまで、「サプライヤーに非礼なことをすると、それはバイヤー企業の製品の買い手も失うことになる」といわれてきました。礼節を欠いたバイヤーの属す企業の製品など買うはずがないからです。今(こん)日(にち)では身近に接する人だけではなく、自分の行為が常に社会に見られているという意識を持つべきでしょう。
注意すべきは、これらの手段を手段で終わらせてはいけないということです。たとえば金融商品取引法の一部規定であるJ-SOXにおいては財務報告の適正性の確保を要求しています。それに伴って、多くの企業が業務プロセスの文章化を進めました。しかし、J-SOXでは文章化の徹底が謳われているわけではありません。「最近は法律がやかましい」と言うのではなく、その法の精神をこそ読み解くべきです。
文章化を徹底するでは、システムづくりとルールだけを作れば終わりという、悪しき形式主義がはびこるだけでしょう。これは、むしろこの規制が生まれた社会的要求を利用して、調達・購買部門のありようを刷新するチャンスとしてとらえるべきものです。
CSR調達といっても、単に「当たり前のこと」をするだけのこと。グリーン購買といっても、これからの社会に求められる「当たり前のこと」をするだけのこと。J-SOXといっても、これまで不透明だったプロセスを見直すという「当たり前のこと」をするだけのこと。
そう考えれば、何ら難しくなく、むしろこれまで本書で繰り返し述べてきたことです。横文字や難解な単語は、いつの時代でも新概念の匂いを持って人々に語りかけてきました。しかし、そのほとんどはこれまで行われてきたことの延長や焼き直しにすぎません。
これまで、BtoBの調達について、いくつもの項目について述べてきました。これからも調達・購買のあり様は変わることがあっても、根底に流れるものは変わることがないでしょう。どの時代においても、物事の目的を考える謙虚さと炯眼ほど求められるものはありません。
私が業務を始めたころから体に身につけてきた基本――。その通奏低音は止むどころか、年々大きなうねりとなっています。そして、そのリズムと旋律は、いまだに私の体のなかを揺らし続けているのです。