調達原論3【35回目一集中購買】

35「集中購買」

まとめるのは製品だけではない 

 

集中購買とは何か? それは、文字通り、調達・購買機能を特定部署が一手に担うことです。

大企業にみられる日本・世界拠点分散型企業には、多くの場合、その拠点数だけの調達・購買部門が存在します。たとえば、その横軸で調達品を見たとき、類似・同一製品がいくつもあるのに、バラバラの数量で買っていてはもったいない。まとめて交渉・発注することで、折衝対象のボリュームが増え、交渉力も増していく。その結果として、安価になる。これが集中購買誕生の背景であり、集中購買の成果として喧伝される効果はこのように結実したものでした。

しかし、その効果がどれも思い通りに表出してくるかというとそうでもありません。ある企業では、本社の調達・購買企画部門が全拠点をとりまとめようとしたものの、各拠点にたいして、調達方針を推進させられず、また、協力も得られずに頓挫していきました。これは、現在多くの集中購買取り組み企業で見られる光景です。

と思えば、世界各地に散らばる拠点を持つある企業は、特定サプライヤー製品の調達量の最も多い拠点が、そのサプライヤー本社と一括で交渉を実施し、翌年・翌期の価格を代表して決めています。これによって、コスト低減だけではなく、省人化も図り、大きな成果をあげているのです。

前者ができておらず、後者ができていることは何でしょうか? それは、実利を得る主体が、実行の主体であるということです。逆に、実行者と利益享受者が同一ではない場合。これが、多くのプロジェクトが失敗する要因であり、集中購買が失敗してきた原因でもあります。

考えても見ればわかります。本社部門が実行して、コスト低減の果実を受け取るのは各拠点。これでは、本社側の熱意も沸かず、かつ、各拠点にしても本社部門が打ち出す「いつもの机上の戯言」としか思わないでしょう。

しかし、後者はそうではありません。実行する部門は、少しでも量が増えれば交渉力が増すチャンスですから、各拠点の仲間を増やそうとするでしょう。しかも、増えなくても量が少なくなることもありません。他拠点にしたって、安価な製品を買えるチャンスに相乗りすることもできます。そこには、モチベーションも、インセンティブも両方が介在します。だからこそ、実行者と利益享受者が同一であるべきなのです。

このような仕組みがわからない企業の集中購買においては、ときとして、本社から各拠点にたいして「非協力的だ」などという批判がなされます――「自分たちの『トク』にならなければ、熱意をもって動かない」。これは、倫理的には批判されるべきことかもしれません。しかし、他人の倫理を向上させようとして鼓舞することは良くても、一方的に批判だけを繰り返すことこそ、倫理的に最も責められるべきことなのです。

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