調達原論3【31回目一毎期のサプライヤー評価】

31「毎期のサプライヤー評価」

評価するということは、評価されること 

 

自分とは何か――そんな問題は常に哲学者の関心でした。独我論にも発展していくこの問いは、結局のところ「他者との関係によって、アイデンティティーは確立していく」という結論に落ち着きます。他者との関わりや、他者からの評価……それらが自分を自分たらしめている要素なのです。他者という存在がなければ、自分の確立は難しい。

一年間のサプライヤーの協力度を、バイヤー企業の視点から類似企業とともに比較し、点数付け提示する。それは一見、上の立場からの通知表のように思われるものの、サプライヤーのアイデンティティーを明確化し、弱点を克服させる好機となるものです。

自分がそうであるように、サプライヤーも自社の相対的評価を知らないことがほとんどです。それを教えてあげること。できるだけ客観的に、かつ将来の期待を込めて。バイヤーという個人が作った資料であれ、それはバイヤー「企業としての」強いメッセージとなります。

バイヤーが作ったサプライヤー評価資料は、期初のイベントとしてサプライヤーの上位者(営業部長・営業役員クラス等)を招いたほうが効果絶大です。一年間の調達を通じて、お礼を言いたいところ、改善してほしいと要求したいところ、さまざまな観点から率直な意見を交換することは、今後の関係強化にもつながります。多くの場合、その資料は、サプライヤーの社内会議資料「お客からの声」としても使われるはずです。それが、社長を含む経営層を動かし、バイヤー企業の期待に応えようと奮起してくれます。

加えて、重要なのは「評価する」という行為が「評価される」ということにつながることです。皮相的なコスト低減率しか比較できていない場合と、現在価値評価に基づく対投資利益率や資本コストに対する各社の安全率までを分析している場合と、どちらが有益な情報でしょうか。サプライヤーが、「はっ」とする驚きとともに、明日からの行動を変えようと決意するのはどちらでしょうか。

サプライヤー評価とは、単なる結果報告の場ではありません。それは両社のあいだに適度な緊張感を保ち、お互いの進歩をより良い取引につなげていくという自己研鑽の機会にほかならないのです。

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