調達原論3【20回目一海外調達】
20「海外調達」
目的は海外にあるのか、良い製品を調達することにあるのか
サプライヤーとの馴れ合いを唯一価値としてきた古い調達・購買のあり方から脱皮して、これからはグローバルなソーシングを実施する――、このフレーズがある種の魅力を持ってバイヤーたちのなかに浸潤してきました。横文字ばかり多用する人は話がわかりにくい人に共通して見られる性質です。ただ、それはよいとして、それ以降バイヤーたちはこれまでの調達・購買に含羞を抱き、中国調達を連呼するようになりました。
国内はダメで、中国は良い。このような二項対立は、いつだって人間を不幸にします。
私の考えを端的に述べるとこういうことです。「中国サプライヤーを探す前に、国内サプライヤーをもっと探せ。結果が出てから中国に行った方が良い」。
蜃気楼のようなイメージだけを優先させて、既存の国内サプライヤーしか知らないのに、かつまともな価格査定すらしていないのに、すぐさま中国調達とは、明らかに一種の病癖です。十分国内を探したあとに、それと比して海外調達の優位・劣位性を確認しましょう。
そして、その後にそれでも海外サプライヤーを選定するときになって、次のインコタームズが生きてきます。
良く使われるのは、相手国港渡しのFOB、日本側港渡しのCIFです。それ以外に、完全に自社工場渡しとするDDPくらいは覚えておきましょう。海外調達で気にすべきことは、初歩的なこととして
- ex-WORKSのような相手の工場出しコストに惑わされず、こちらの引き取りまでのコストを把握しておくこと
- 品質条件に留意し、納入に関しては緊急対応時あるいは欠品時のリスクをいかに両社で分担するかを事前合意しておくこと
- 契約書が漏れのない内容を包括した上で締結し(多くの企業では法務部門でチェックしてくれるはずです)、その上で人的コミュニケーショーンも欠かさないこと
暴論ですが、海外調達に身を委ねると、「トラブルは起きる」ものです。そこでは、事前にトラブルを抑える準備とともに、諦観も必要になります。異文化同士の相互理解とは、対話を重ね、相手の懐に入っていく勇気が必要とされるのです。
さて、ここで若干矛盾することをあえて書いておきます。円高になり、明らかに海外サプライヤーに優位性が認められるときは、それは輸入を決断するときだということです。円高には輸出産業が多い日本においてはダメージともなりえます。その一方で、自国通貨の強さと豊かさを享受できる方法は、輸入によります。また、円高が業績に影響を与える企業にあっても、もっともリスクを軽減させる手法は、輸出額=輸入額とすることです。
円高の危険性ばかりに目を向けると裏にあるメリットに気づきません。いつだって誰もが絶望的なときほど、チャンスが眠っているものですから。