調達原論3【21回目一見積り査定】

21「見積り査定」

目的査定は価格を下げるだけの意味ではない 

 

健全な人間関係とは、相互尊重のなかにこそ育まれます。こちらが劣っていて無能であれば、相手からは使い捨てにされるだけでしょう。教養というものを学ぶ必要は、そこに集約されます。

見積りを受け取ったときに、その内容が何もわからず、見積り値から単純に「○○円値引いてくれ」「10%くらい安くしてくれ」と連呼するだけでは、相手から内心バカにされ次回からはそもそも加算された見積りが届くだけのことです。「どうせ意味もなく買い叩かれるのだから、高くしておけ」とは営業マンの偽らざる本音でしょう。

バイヤーは見積りを受け取ったときに、自分の尺度でそれを判断しフィードバックせねばなりません。自分の尺度と照らして価格が安ければそのまま通過させ、高ければロジックとともに提示する。あるいは、安すぎるのであれば、「名刺価格ではないか」と疑ってみせ、その理由を尋ねる。そのようなブレない態度こそが、サプライヤーとの相互尊重をもたらす行為だと、私は信じています。

見積り査定には何種類もの方法がありますし、そのどれが絶対的に正しいということもありません。むしろ、正解は製品の数ごと、バイヤーの数ごと存在します。「この場合は、どの手法を適用したほうがベストか」ということを人生的蓄積のなかから思索し、選び出すことこそバイヤーだからです。

あなたの調達・購買部門が慣例的にどうやっているのかも、前任者がどうやっていたのかも、究極的には関係がありません。常に過去を否定し、より良い将来を創出するために模索することこそ大切なのです。たとえば、これまで類似品との比較だけで査定を実施していたところを、タイムウォッチをもってサプライヤーの工程に出向き、作業時間から導かれる作業コストと金型と原材料費を積み上げることによって精度の高い計算ができるかもしれません。あるいは、他社の購入レベルを知ることによって、これまでにない視点で査定ができるようになる可能性もあります。

バイヤーとは、日々の態度で仕事に対する姿勢をアピールする仕事です。そう、見積り査定とは、バイヤーの強力なるメッセージにほかなりません。

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