調達原論【27回目】サプライヤ籠絡と運命共同体化
突発的な需要が生じたとき、サプライヤから緊急で納品してもらわねばならない。しかし、日ごろの関係性が浅ければ、その実現は難しい。ただし、あまりに取引関係が深すぎ、サプライヤのすべての売上を自社が占めていたとすれば、さすがに危ない。自社発注が減ればサプライヤは倒産危機を迎える。
ではどの度合いが良いか。これを一つ、「依存度」という基準で表現できる。この依存度とは、前述の関係を比率で表現したものだ。ずばり基準を申せば、10%以上、30%以下がふさわしい。
10%以上とは、サプライヤから協力を取り付けやすくなる率だ。私の企業経営経験からいっても、売上高の10%を占める相手は重要顧客先だといっていいし、無碍な扱いはできない。
同時に30%以下とは、サプライヤ経営に深刻なダメージを与えず、かつ多くの人的資源を振り向けてもらえる点だ。もちろんこれ以上でも、ゆるやかに協力度はあがっていく。しかし前述の通り、それは運命共同体にすぎる。さらには、自社のみと取引をすると情報摂取や経験としても最適とはいいがたい。
ただし、企業によっては、サプライヤの自社依存度が80%だとか、90%だとかのケースがある。もちろん、サプライヤを籠絡し、事実上の自社グループとして活用する場合はいいだろう。しかし、その際にも二点は忘れるべきではない。自社事業の推移を綿密に伝え、最悪の場合、リストラクチャリングを計画的に実施できるよう支援すること。そして、自社以外へも売り込む努力を促し、技術的な進化を失念しないよう強くプレッシャーをかけることだ。