調達原論【26回目】マルチソース化の真実

調達品のサプライヤが災害に遭ったらどうするか。自社の生産を止めるわけにはいかない。そこで考案されたのがマルチソース(複数社購買)だった。当たり前だ。1社から買うのではなく、2社から買えば安定する。

しかし、ここに大きく三つの落とし穴があった。

1.マルチソース以外の部品で生産が止まった。すべての部品をマルチソース化するのは費用的にも難しい。しかし非重要部品でもなければ生産は止まる。

2.マルチソース化していても、部材生産に使う材料が同一であり、その材料メーカーが被害に遭っていた。したがって、それを使用するサプライヤをマルチソース化したところで、どのサプライヤも生産できなかった。

3.マルチソース化していても、代替サプライヤのキャパがオーバーし、ほとんど意味がなかった。

もっとも教科書的ではない事象は3だろう。教科書は、サプライヤを分散しておけば、他社から調達できると教える。しかし、緊急時にサプライヤに代替生産を依頼しても、「代替生産できる能力はありません。それに、ひごろの重要顧客に優先的に生産物を振り向けなければなりません」といわれる。これが、複数の調達・購買担当者から聞いたリアルだ。たしかに日ごろつきあいの浅い企業から頼まれたからといって優先的配慮をしてくれるはずはない。

マルチソースもいいが、私が勧めるのは、両社で被害サプライヤの復旧を試みることだ。その経験はさらに両社を堅く結ぶだろう。付き合うと決めた企業だ。それくらいの覚悟はあっていい。私はこれを「戦略的癒着」と呼んでいる。

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