調達原論【25回目】調達リスクマネジメント
昨今、調達リスクマネジメントに注目が集まっている。多くの企業は調達品を組み合わせる。したがって調達品を安定的に確保しようとするのは当然だ。ただ、昨今とくに震災が重なったため調達品管理の重要性が再認識された。
ところですべての調達品に完全な対策は不可能だ。そこで先人たちは、発生可能性と損害の二軸で濃淡を分けた管理を推奨してきた。そしてこの方法は現在でも有効である。具体的には、プライマリーリスク、セカンダリーリスク、マイナーリスクにわける。そして、プライマリーからセカンダリー、マイナーにいたる順で対策を講じていく。
考えるに頻度も損害も高いリスクには、対策は必須だ。たとえば、調達先を二重化したり、あるいは調達品を標準化したり、方策は考えうる。そして、マイナーリスクは起こったとしても十分に事後対策が可能な領域だから、戦略的に「無視」もできるだろう。その意味で費用対効果の計算が重要だ。
しかし、有効かつ効率的なこのリスクマネジメント方法は、根源的な欠陥を抱えている。それは、大震災のような惨事は、必然的にセカンダリーリスクに分類される点だ。めったに起きない災害については、そのすべてを想定することはできないし、さらに費用対効果を考えると対策のうちようがない。
だからこそ、プライマリーリスクの対策は講じ、さらに効果が顕著だった企業も、セカンダリーリスクで被害に遭った瞬間に「無策な企業」とレッテルを貼られることになる。実は調達リスクマネジメントの不可能性がここにある。