調達原論【24回目】サプライヤとの面談管理
当時22歳の私には、資材調達の上司がサプライヤとゴルフに興じているのを見て嫌悪感を抱いた。なぜ土日に懇親目的でサプライヤと酒を飲むのか。それこそ日本企業間文化の悪しき慣習ではないか。ITの時代になぜ対面と交流が必要なのか。しかし私はこの考えを10年かけて修正するにいたった。たしかに接待やゴルフは控え目がいい。ただ対面や交流は、やはり企業間取引円滑のために必要だ。パソコンでのやり取りだけでは、協力体制は創れない。外資系企業はドライと思われながら、サプライヤとの関係性向上のために対面の回数を管理する手段を生み出した。リテンションマネジメントという。
リテンションマネジメントとは、リテンション(二社間の関係性を維持・向上させること)をレイヤーごとに「見える化」していくものだ。たとえば、横軸にサプライヤの各役職、縦軸に自社の各役職名をそれぞれならべる。
そして、一年や半期など、一定期間の面談有無をチェックしていく。対面などによって、こちらの調達戦略を伝え、先方の営業戦略と軌を一にしているかを確認するのだ。たとえば、パターン1では先方の上役に会えていない。これは、トップ間の情報交換不足が生じているとわかる。あるいは、パターン2では自社トップの意向をサプライヤに伝えられていない。
最低でも年に一度はトップ間のミーティングを設定し、意思の疎通を図る。なんだかんだいっても、緊急時に助けてくれるのは顔見知りのサプライヤだ。リテンションマネジメントといっても新しい概念ではない。日本企業が昔から行ってきた、絆を大切にすること。それが見直されているのだ。