調達原論3【3回目一ティアダウン活動】

3「ティアダウン活動」

製品はいつも君に語りかける 

 

製品は、いつだってアイディアの宝庫です。それが他社のものだったとしても。

ティアダウンは、競合他社等の製品をばらばらにすることです。そして、分解することで各製品の性能やコスト、アッセンブリー手法を「盗み見る」ことで新たなコスト低減手法や品質の向上策・お客への製品魅力度のアップを模索することでもあります。

原価企画部門や設計部門が主担当となって実施することが多いこの活動は、調達・購買部門も参入することにより全社的なものとなるのです。競合他社が使っている製品は、もしかすると自社では付き合いのないサプライヤーかもしれません。また、これまで自社内で組み立てていたものも、競合他社はサプライヤーに委託している構造となっている場合もあります。その一つひとつを検証することで、他者の叡智を超えた新製品を創り上げるキッカケとするのです。

ゲーム機や家電のような価格競争が厳しい業界では、競合他社が安価な製品を市場に投入するたびに、分解しては想定コストを割り出す活動が繰り返されています。また、海外では分解した結果をウェブページにアップし、さらにその構造部品をバージョンアップすることによりオリジナルの製品を創り上げてしまう猛者までおり、それも優れた他社製品への探求心と読み解くことができるでしょう。

さて、技術的な解説は専門書に譲るとして、バイヤーがティアダウン活動に参加する際の留意点を述べておきます。それは、製品の差異を見るのではなく、その製品の役割に注目することです。

技術的なこともわからないで良いわけではありません。しかし、完璧に理解できなくても良い。重要なのは、他社の製品がなぜそのような構造だったり、そのような部品を使っていたりするかを考えることです。

製品にはすべて役割や意図が隠れています。その隠蔽されたメッセージを読み解くことで、一段上のバイヤーになれるはずです。

たとえば、製品のなかに隠れたプレス部品なのに、なぜ端部分が研磨されているのか。お客が手に触れるところではないのに、磨かれる必要があるのか。もしかすると、それはサプライヤー工程での工員の安全性を考えたものではないか。あるいは、製品の温度条件や振動条件によって、ハーネスがそのプレス部品に触れることがあり切断を恐れたものではないか。とするならば、ハーネスをリングで固定したほうが安価ではないか。

製品とは無言であっても、バイヤーに多くを語りかけてくれるものなのです。

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