1章-14 モチベーションゼロの仕事術
また、現時点で描いた自己実現像や夢も、スピード社会に生きる私たちにとっては、すぐに古新聞になってしまうことも多い。だから、自己実現や夢に拘泥することなく、そして、その失敗にめげる必要はない。
私が勧めたいのは、逆の「自分なくし」である。自分を規定したって意味がない。時代の行く末を考え予想は立てる必要があるが、日々の生活では、たんたんと仕事をこなすだけだ。夢とのギャップに悩むのではなく、ちょっとしたプライドが傷ついたくらいで落ち込むではなく、ある種の楽観を抱き、「今」に集中すること。自分の可能性を、夢などという現時点の自分が考えた程度の堅苦しい型にはめるのではなく、より柔軟に持つこと。
「今さえよければいい」とは、刹那主義的な考えではないと私は思う。むしろ、「長期的に考えるほど、今に集中したほうが、長期的に良い結果が出る」ということではないか。成功者たちも、その多くは、「今」に集中し、力を発揮してきた。
時代全体の雰囲気に影響されず、よどんだ空気に汚染されることなく、目の前の仕事を見続ける。少なくとも私は会社から「やりがい」や「夢」を強要されたくない。
私は、「やりがい」や「夢」はあとからぼんやりとわかるものだと思っていた。やる気やモチベーションは、あるとき、勝手に出るときもあれば、出ないときもあるものだと思っていた。
しかし、私は大きな誤解をしていたようだ。
いまでは自分で「やりがい」や「夢」を創りあげるのではない。他者から作られたそれらが、私たちの心に入り込むのである。
しかも、気づかないうちに、そして巧妙に。
さらにそれが絶対的なもののように私たちを縛ろうとするのである。