0章-2 モチベーションゼロの仕事術

大学を卒業して、はじめて会社に出社するとき、地下鉄のエスカレーターを登りながら暗鬱な気持ちになったことを覚えている。仕事をはじめてからもずっと、机に座ってパソコンの電源を入れるとき、「今日もイヤだなあ」といつも思っていた。

新人研修のとき、まわりのみんなが入社後の抱負をまじめに語っているので驚いた。自分にはそんな将来の像も見えておらず、自分を焚きあげるモチベーションなどなかったからだ。

私が入社したとき、同期は25人だった。配属後、しばらくしてから同期の飲み会があったときに、多くは「仕事が愉しい」といっていた。「仕事がつまらない」といっていたひとは数名にすぎなかった。私も無理をして「どちらかといえば愉しいかな」といった。しかし、「仕事が愉しい」といったはずの同期は1年で三人も会社を辞めた。2年目にも3年目にも三人が辞め、4年後にはたった半分になっていた。そのいっぽうで「仕事がつまらない」といっていたひとたちはなかなか辞めず、いまでも同じ会社に勤めている。

会社を辞めることの是非を問いたいわけではない。ただ、「仕事が愉しい」場合は、自らそう宣言することでモチベーションを創造し、他者から承認されたい気持ちを支えにしていた。モチベーションと承認欲求がなくなった瞬間に、仕事を続ける意味を見出すには難しかった。

いっぽうで、「仕事がつまらない」場合は、そもそも仕事へのモチベーションや承認欲求に支えられていることはなく、ただ仕事を仕事としてこなしていた。

両者を比べたとき、前者は「やりたいこと」を追求して生きるたくましいひとたちに見えた。後者は、「ほんとうの自分」を探そうとしないかよわいひとたちに見えた。

でも、それが間違っていると気づいたのは、そのずっとあとのことだった。

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