8-5.電子調達 ~そんな電子調達に騙されて! 「新しい購買のIT活用法」~
そう思った私は今回もまた部長のもとに走っていった。
「部長、今回は電子調達の御提案なんですが」
「電子調達?それこそ、この前ERP のシステムを導入しただろう。それにこの前、リバースオークションもやって成果が出ているだろう」
「成果?あれは失敗しているでしょう?」
「失敗?」
「そうです。失敗していると思います。あのあと、どれだけ費用がかかっているか御存知ですか?相次ぐトラブルで、間接費が相当かかっています。たいてい上の人々は見た目上のコストダウンしか見ておられませんが、それに伴って非常に大きなコストが出ていっているんです」
「でも、それは別にリバースオークションを使わなくたって同じだろ?」
「そうですね、全く同じことです」
「じゃぁ別にリバースオークションの責任じゃないだろ?それは担当者の責任のところもあるだろ?」
「そうなんです。だけどそれだけだとも言い切れない。だって、上からの圧力ってすごいでしょう。『リバースオークションとか電子調達を使って、コストダウンを推進する』という既に決まった目標がありますから、担当者としても『コストダウンは無理です』なんて言えないですよ。だって普通に競合見積りしても、安くならなかったり、安くなってもなんだかんだ理由つけて既存サプライヤに発注を続けたりしているわけですから。電子調達を使ったからって、突然コストダウンができるはずもないですよ」
「じゃぁ、そういうことを使ってコストダウンをすることは無理だっていうことか?」
「いや、そういうことでもありません。ウチの中でも業務プロセスがある程度固まっているところがあるでしょう。一般財の購入とかです。文房具とかそういうものを購入する際は、一般工業品と異なりますから、見積りを取ってサプライヤを決定するというプロセスが相当決まっています。しかも、品質評価もさほど必要としない。まずはこういう領域に対して使うべきだと思います。それ以外のところは、まずプロセスを整備することに力を注ぐべきです」