8-6.電子調達 ~そんな電子調達に騙されて! 「新しい購買のIT活用法」~
「文房具を?」
「文房具なんてたいしたことない、と思ってついつい大物購入品に目がいきがちですけれど、文房具だってまとめたら相当な量になりますよ。それに、今の業務のプロセスを整備できている部員ってどれくらいいます?大抵が勘と経験に頼っています。例えば、こういうときはこのA社、こういうときはB社という風に感覚では分かっている。だけど、明文化できていないでしょう。ああいうツールっていうのは、そういうプロセスを整備したあとに、より効率化するために使うべきなんです」
「それは、皆やっているだろ?それに世の中だって、電子調達っていえばコストダウンと共に語られるだろう」
「プロセスを効率化したほうが絶対にコストダウンにつながりますよ。例えば、見積り条件の提示。一回サプライヤに提示したあとに、色んな部署から要求がついて結局何回も見積り条件をやり直すでしょう。こういうものをちゃんとマニュアル化できれば、必ず自動化できるところが見えてきます。そういうところが分かれば、そこにシステム化費用を予算化してシステムを導入することができます。だって、他社でどんなに有益なシステムを導入しても、受けて側の我々がプロセス整備をできていなかったら、バカなシステムのバカを加速させていくだけですよ」
「お前、それは言い過ぎだろう・・・」
「いや、決してそう思いません。加えて言えば、あの下らない『交渉研修』なんて止めませんか?新人に毎年受けさせているやつ。ああいうのを止めて、部員全員にエクセルの上級講座とか、PCスキルの向上を促した方がいいですよ。だって、身近に改善できることなんてたくさんあります。部員のほとんどはパソコンを使った業務をやっているわけですから。そうやって業務を効率化していくときは、前提として自らの業務をマニュアル化したりプロセス整備をしたりせざるを得ません。そういう果てにこそ、大型のシステムを自分の仕事に結び付けて利用できるようになると思いますよ」
「交渉よりもエクセルを、か・・・」
「どこか購買というところは、勘と経験を必要以上に評価してきたところがあります。そういうところに、このような提案は反感をくらうと思ってはいるのですが・・・」
「いや、勘と経験だけじゃ今からはダメだと思っている。それは皆の共通認識だ」
「いや、そう言って頂けると嬉しいです」私は部長室を出るなり、購買変革の一項をすぐさま書き出した。
「電子調達を有効に利用するために、バイヤーは次のことを実行する。一つ目、業務の引継ぎのときは、価格表やコストテーブルではなく、業務プロセス表を後任者に渡すこと。二つ目・・・」
私は思った。電子調達の成功を米国だけのものにしておくものか。