調達購買改革の5 つのモデルとコスト低減インパクト
企業の調達・購買業務はその進展度により以下の5 つのモデルに分けて見ている。調達・購買業務の5 つのモデル・ 分散購買モデル購買機能が社内で確立されておらず、各ユーザがその時に必要になったものを場当たり的に購入し、数多くのサプライヤから手間を掛けて少量ずつ調達している。
よって価格交渉が行われるにしても、品目毎、ユーザ毎に個別に価格交渉が行われ、労力を掛けていたとしてもサプライヤから適正な価格が引き出せていない。・ 集中価格交渉モデル初歩的な調達・購買機能が立ち上がり、事業部や事業所単位と、ある程度まとめて価格交渉が行われる。価格交渉に購買データが使用される様になり、事業部・事業所単位で契約、期間も年契約にまとめられる様になる。カタログ購買システムの導入も一部の企業では実施される様になる。
しかしそのスケールメリットによる購買力は限定的で、且つ社内統制も利かず契約外購買が止まらないといった要因が更に集中価格交渉で得られるはずのスケールメリットを減少させている。・ 全社集中購買モデル事業部や事業所を超えて企業レベルでの需要をまとめた形で交渉、契約が行われる。全社の購買データが統合され、それを用いた支出分析に基づきサプライヤとの交渉が進められる。
またこの段階では調達・購買機能の能力が高くなければ務まらず、サプライヤの絞込み、調達・購買プロセスの改革と標準化、ベンチマークといった先進的な調達・購買改革の手法が用いられる。・ 企業グループ集中購買モデル一企業の枠或いは国境を超え、企業グループやグローバルレベルで需要がまとめられ交渉、契約が行われる。ローカルとグローバルのバランスは各企業グループにより異なるものの、企業グループやグローバルの調達・購買機能が一つの統合された組織にまとめられる。合わせて企業グループ全体或いはグローバルでの購買データの統合や調達・購買システムのグループ、グローバルへの展開が進む。
・ 開発購買コラボレーションモデル
部品統合と設計への部品推奨、サプライヤからの提案の活用が推進される。コンポーネントサプライマネジメントシステムを通じて全社での購買部品・技術データの統合及びサプライヤ管理、開発購買が進められる。
日本企業がこの5 つのモデルの中でどのようなステータスにあるかは、業種や個別企業、また購入(支出をしている)品目によって様々である。一般的には、自動車のような購買・調達機能が戦略的に捉えられている先進的な企業においては、原材料や部品などの領域においては、既に開発購買コラボレーションモデルに移行しつつあるものの、多くの製造業での間接材・サービス商材購買では、依然、事業部レベルでの集中価格交渉モデルに留まっている企業が多い。
非製造業では、そもそも調達・購買という概念自体が仕入れの領域以外では乏しく、分散購買モデルに留まっているものの、近年それを一気に全社集中購買モデルに移行させる試みが増加しつつある。いずれにしても基本的な考え方は、組織範囲を広げ、買い物のボリュームを集約、もしくは、継続して購入する(支出する)ものを年間でのボリュームを集約、このような形で集中購買化を行うことを前提として、有利な契約条件を締結し、契約プロセス(ソーシングプロセス)と調達・購買オペレーションプロセスを分離することである。
このような活動を行うことでどの程度の効果があるか、については個別企業によりばらつきはあるものの、従来殆ど手がつけられていない状況から、何らかの調達・購買活動を行い、ボリュームメリットを生かした契約を行うことで、当社の実績から平均10-15%程度のコスト低減の実現、有利な条件での調達・購買が可能となる。
これは、何もサプライヤをいじめることで実現するのではなく、次章移行で述べる調達購買マネジメントの実現により、購買企業と販売企業の両者にとってメリットがある形で実現可能な数字である。このように坂口が今後進めていく購買改革プロジェクトが「購買が会社を変える」という目標は卑近なことではなく、実現可能な世界であると言えよう。