調達・購買活動と企業の戦略目標

果たして調達・購買部門の改革活動は企業の戦略目標と合致していないのだろうか。決してその様なことはなく、企業価値及び評価の向上を調達・購買業務の目的と位置づけ推進していくことにより、企業は調達・購買業務や調達・購買部門を企業の戦略目標に密接に結びつけることができる。例えば、調達・購買業務がしっかりマネジメントされていれば、不要な支出を抑え、外部支出を最適化し、事業コストは削減されている。ニーズ・シーズが高度化し、一社単独での製品・サービスの提供が難しくなる一方だが、調達・購買部門は力のあるサプライヤを発掘し開発段階から巻き込む事で、魅力ある製品・サービスの開発やそのチャネルづくりで貢献していくこともできる。

 

調達・購買業務の中でも、コア業務とノンコア業務を見極め、ITやアウトソーシングを活用することにより業務を効率化することで、経営資源の有効活用への貢献が可能となる。これらは全て直接的に企業価値を向上させる要素である。そして、こうした改革のスピードを上げ、成果の刈り取りを前倒しにしていくことは、改革の成果の現在価値を高める事になり、更に企業価値を向上させる。グリーン調達、CSR調達を進めていく事や、取引先の決定~検収~支払と金銭のやり取りに関わる調達・購買業務でコンプライアンスや業務管理を徹底していく事は、ひいては企業ブランド、評価の向上につながっていく。

 

資本市場の経営に対する影響力は大きくなっている。企業価値及び評価の向上はその資本市場からの要請でもあり、企業の究極的な目標でもある。ここで実際の企業を基に作成した財務モデルを通じて、調達・購買活動が具体的な企業価値へのインパクトを検証してみよう。ここに売上高2,000 億円、営業利益率3.25%、総資産1,330 億円、ROE5.5%、株価2,350円の企業を想定する。

 

・ 調達・購買活動を通じて2 年間掛けて間接材全体の支出を5%低減させると、キャシュフローが改善し、株価が289 円(12%)上昇する。

 

・ ノンコア業務のアウトソーシングを通じてそのオペレータやIT資産を2 年後に12 億円圧縮すると、ROE が改善し期待成長率が高まり、株価が27 円(1%)上昇する。

 

・ サプライヤとの協業により製品や売り場の魅力を高め、顧客への訴求力向上を図った結果2 年後に売上が10%増加すると、キャッシュフローの増加とROE 改善による期待成長率の上昇の二つの相乗効果で、504 円(19%)株価が上昇する。

 

・ 改革を加速させる事でこれらの改善効果を1 年前倒しで引き出す事ができれば、改善効果の現在価値が高まる為、もともとの改善効果による上昇後の株価3,713 円から更に株価を187 円(6%)引き上げる事ができる。

 

この様に、調達・購買業務は経営者の戦略目標の達成に直接関わるものである。但し、ここで見てきた様に、経営者の目標達成には短期的な品目単位でのコスト低減では不十分であり、調達購買マネジメントの構築・定着がその条件となる。次章以降で調達購買マネジメントについて順を追って説明していきたい。

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