はじめに2 調達改革は卑近な例ではない

日本では、90 年代後半に米国を追随する形で、調達・購買改革が一時的に大きく採り上げられた。その一つの波は大手外資系企業で、これらの企業では親会社からトップダウンの形で企業グループでの集中購買が全ての支出に関して進められた。もう一つの波は日本の名門製造業を中心とするもので、特に間接材、サービス商材購買においては、事業部単位の購買から全社集中購買への転換が図られ、調達・購買システム導入を梃子としてモデル転換が進めるというものであった。

 

また直接材に関しては、企業活動のグローバル化に伴い、グローバル、グループも含む集中購買化が進んだ。ところが、後者においては、設計と購買或いは各事業部門といった部門の壁を越える形ではなかなか調達・購買改革が進展しなかった。そうしたところに企業業績が一段落し、当時の一時的な改革の熱は冷めてしまったかの様に見受けられる。こうした現状を鑑みると、これまでの購買コスト低減の取り組みや、巷で調達・購買改革と呼ばれていたものは短期的な収益改善の手段としての場当たり的なものが多かったのではないかと危惧される。一方で、希望が持てる動きもある。既に調達・購買改革に着手した企業の幾つかは、地道ながら継続的に改革を進めている。

 

また、成長企業や非製造業の中から、90 年代後半に発達した調達・購買業務の新しい考え方を採り入れる企業が出てきている事である。これらの企業はこれまでは集中購買という概念さえなく、事業部単位もしくは、個人レベルでの分散購買であったが、収益力強化や昨今の株主からの株価上昇の期待に応えるために調達・購買改革に着手し、一気に全社レベルでの集中購買化や開発購買の実現を図り、更なる成長を図っている。

 

これまでの調達・購買は、コスト低減活動を主体とした短期的な収益改善の手段として品目単位でのコスト削減のための機能として語られる事が多く、なかなか経営者の視点で語られる事が少なかった。そうしたコミュニケーションでの問題が、調達・購買部門のコスト低減への日々の努力やその成果を、「調達・購買部門があれだけコスト低減したと言っているのに、業績は向上していない」といった経営者から見て分かりにくいものにしてしまい、経営者の調達・購買業務に対する関心の低下や、先述の期待外れの成果、につながっていることは否めない。

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