4-3.ソーシング ~どん底からの逆転ホームラン 「バイヤーはすごい買い方の実践で会社の顔になってみろ」~
ある製品を使えない理由なんていくらでも作ることができるはずであり、設計者に任せている限り、設計者の選定サプライヤが購買の意向と重なることなど絶対にない。何でもかんでも、判断の基準軸を設計者に求めるバイヤーたちは、老年バイヤーの昔話を聞いてどう思うのだろうか。
以前の購買部であれば、設計者たちが次々にやってきて部品に関する相談をされたものだった、という昔話を聞いて。今の購買部員は設計者の奴隷に成り下がっているのではないか。確かに、進歩し続ける技術にバイヤーがついていけないのは分かる。それにしても、全ての判断が設計基準でよいのか?このような状況だから、設計者からのコメントも黙って聞くしかないのである。
「ところで、購買さんって何するんだっけ?」と。そして、こういう現状だからこそ、バイヤーは変わらなければいけないのだ。執念と信念を持って変わらなければいけないのだ。私はこの類の話をするときに、以前勤めていた企業のシンガポール支店でシンガポール人のバイヤーがいたことを思い出してしまう。
彼は30歳そこそこで、真面目で真摯なバイヤーだった。ある日、日本企業サプライヤの営業のトップがそこに訪問したことがある。そのとき、その営業トップはシンガポールのスタッフが日本語を解さないと思ったらしく、こうつぶやいた。「現地人はいいから、日本人のマネージャーに会わせて」その一言がシンガポール人バイヤーの怒りに触れた。
もちろん日本企業の現地スタッフだから、日本語くらい理解できたのである。自分の存在を否定されたということを理解してしまったのだ。自分を認めてもくれないサプライヤなど、誇り高きバイヤーにとって一体どんな価値があるだろうか。翌日から、そのバイヤーは全身全力をかけて、そのサプライヤの購入金額をゼロにすべく、「サプライヤ外し」に奮起した。代替サプライヤの選定も始めた。
代替品の品質評価も各部署の協力を仰ぎながら必死でやった。コスト分析もやり、社内折衝を重ね、そして各種手続きも全身全霊を傾けて行った。そして、2 ヵ月後、シンガポール支店がそのサプライヤから購入する金額はものの見事にゼロになった。慌てて、その営業トップが謝罪にきたのはいうまでもない。
しかし、その営業トップは何が問題だったのかさえ理解していなかったのである。そのバイヤーは、一言「俺の力をみくびるな」といった。カッコいい!!私は彼からこの話をきいたときにそう感じた。別にサプライヤをいじめることがカッコいいわけじゃない。男の意地を見せることをカッコいいと感じているわけではない。ロジックや崇高な目標よりも、男の執念をかけて戦うことが大事だといいたいわけでもない。だけど、やはりカッコいいのだ。