4-4.ソーシング ~どん底からの逆転ホームラン 「バイヤーはすごい買い方の実践で会社の顔になってみろ」~
バイヤーという職業に自分の総蓄積をかけ、自己の存在意義を「これでもか」というくらい見せつけるこのカッコよさ。私は、やる気がなく、覇気がなく、漂うだけのバイヤーを見るたびに彼のことを思い出す。バイヤーはカッコよくなければならない。どんなに下らない購買業でも、そこから一つの答えを探せることもある。そしてそれが自分の未知の世界を拓ける可能性があるのだったらどんなに楽しいだろうか。
バイヤーは自分の仕事に誇りを持とう。自分の権利を自分のものとして当然の主張をし、その権利を振りかざしてもよいくらいの実力を見せつけてやろう。ルールを守り、プロセスを守り、自分の生き様としての「買い方」を周囲に見せつけてみよう。そこには自信がみなぎり、確固たる自信と魅力が生まれる。「バイヤーは、すごい買い方の実践で会社の顔になってみろ!!」私はバイヤーが発注先を決める、という当たり前のことを当たり前にやることがまずは大事だと考え、部長のところに走った。今回も、部長の力を利用して社内にこの「当然のこと」を周知徹底させるためだ。
「部長、今回も提案を聞いて下さい」
「なんだよ、また。次は何だ」
「はい。購買革新の一環として、重要なことです。それは、バイヤーが一定のプロセスを確実に遂行して、バイヤーが発注先を決めれるようにする、ということです」
「バイヤーがサプライヤを決めるって、お前。そんなこと当然のことだろう」
「そうです、部長。当然のことです。でも、ご存知の通り、現状ではバイヤーが設計者の奴隷になり下がり、ほとんど上流で設計者が発注サプライヤを決めてしまっています」
「いや・・・そうかもしれないけど、建前上は我々がサプライヤを決めることになっているだろ?」
「そうです。建前だけは、そうなんです。その建前を建前で終わらせないようにすることが重要だと思うんです」
「それは建前ですっていえないだろ」
「いや、まず言ってしまうんです。バイヤーは設計者のいいなりだって言ってしまうんです。他の部署に言ってしまうんです。私たちの仕事世界では設計と我々購買が全てです。だけど、社内には多くの部署があります。そういうところから見ると、設計と購買なんて一部の部署です。全部署を集めて、実はバイヤーがサプライヤを決めることができていないという現状をプレゼンテーションするんです」
「そんな恥かしいこと言えるか?」
「言ってしまうんです。これだけコストのプロ集団がいるのに、高い製品ばかりを決めざるを得ない現状をアピールするんです。『これだけ会社の原価を悪化させている』と強調するんです。そして、同時に『我々にちゃんと任せてくれたら、これだけコストを抑えることができます』と言うんです」
「反論が山のように届くぞ」
「反論なんてくるはずありませんよ。購買がサプライヤを決定するってことがルールなんです」
「だけど、購買が設計に頼っているところもあるだろ?」
「もちろんあります。技術的なところは特にそうですよね。だけど、それでも決まったルールを守らねばなりません。それに、現状では『設計か購買か』という不毛な二項対立にがんじがらめにされている気がするんです。『設計が全てを決定している』、ゆえに『購買が全て決めるべきだ』ではないんです。購買に任せてくれっていうのは、購買が窓口になり会社の各部署の意見を統合し、様々な制約の中からベストのサプライヤを決定する、ということなんです。社内のコミュニケーション媒体となり、社内をまとめる役目を先導して果たすんです。ぜひ、定期的に購買主催の『調達先決定会議』をやりましょう。そのときになって初めてバイヤーは決めることの難しさを知ることになるのだと思います。こんなに面倒ならば、設計に決めてもらったほうがマシだと思うかもしれません。だけど、いいじゃないですか。こういうことを考えること自体今までなかったことですから。上手くいけば、まさにどん底からの逆転ホームランですよ」