10-6 購買部門バイヤー評価 ~エクセレントバイヤーに花束を 「購買改革のためのバイヤー評価法」~
「いや・・・だが、簡単には・・・」
「分かります。たいていは自部門の中だけで完結したいものですから。でも、それをやる。自分が会社の中でどういう評価を下されているかを知ることは大変有益なことですよね。見た目のコストダウンだけを繰り返す人は、もちろん評価が低くなるのだと思います」
「そりゃそうだが・・・。そういう奴らは管理職が見れば分かるさ」「分かりますよ。ただ、それを見えるようにするんです。その人の購買業としての能力、コストダウンの絶対的評価。これらを明確にしていく。その果てに、みんなが自立して本当の意味での『すごい購買部』を創るためにどうしたらよいかを考え出すんだと思うんです。それに、皆が皆、役に立つことをやっていれば別に恐るに足らず、です」
「いや、だからちょっと待て。そういうことを考えるのはプロジェクトじゃない。我々管理職であって、そこは信じろ」
「どこまでも、理想を語らねば改革なんてできないと思います。少なくともいまのままではダメなんです。私は来週プロジェクトの進捗報告のために社長と会いますので、そのときに今の購買評価の曖昧さと、コストダウンのカウントのデタラメさについても語ろうと思っています」
「おいおい。お前、普通自分の上司を飛び越して話すもんじゃないってことくらい分かっているだろ?」
「分かってて、あえて、です」
「だから、何も考えないとは言っていないだろ。私だって今の評価制度が完璧だとは思わないし、多少の不満が部員にあることも知っている」
「じゃぁ、プロジェクトの中の一つの項目として挙げてよいですね。では、やっぱり社長に報告いたすことになりそうです」
「普通じゃ考えられんぞ、そんなこと。分かったよ。じゃぁ、あくまで『目指す方向』というくらいの位置づけで、さっきのアイディアを書いておいてくれ。そんなに早急に制度が移行することはできないから。徐々に移行するくらいのイメージでな」
「分かりました」。
私は部長の意図が分かった。プロジェクトに項目として乗せても、実現するかどうかは分からない。たいていの場合は自然消滅することが多い。部長もそれを狙っているのだ。私は机に戻るなり、社長に見せる評価制度の改革案を書き出した。
「購買の評価制度として、次の三項を早急に入れることを決定する・・・」