10-5 購買部門バイヤー評価 ~エクセレントバイヤーに花束を 「購買改革のためのバイヤー評価法」~
そう思って、私は今回もまた部長のところに赴いた。こういう悪習をなくすためには、まず購買部員の評価制度を変えなければいけないと思ったからだ。
「部長、購買変革プロジェクト最後の提案を持ってきました」
「最後・・・。そうか、色々あったが、最後に持ってきたのは何だ?」
「購買の評価制度の件です」
「評価制度?えらく大きなところを持ってくるな」
「ええ、最後は結局評価の制度を変えなければいけません。優秀な購買パーソンを正しく評価してあげる制度です。評価の不平感があれば、部内は上手くいきません。どんなに頑張っても認められないならば、モチベーションが下がることが自明だからです。どんなに努力しても評価の変わらなかった社会主義国では・・・」
「分かった。分かったよ。それで案は何だ?」
「簡単です。三つのことを導入するということです。一つ目は、評価の大きなウェイトを占めているコストダウンに関してですが、これを考慮するのは止めます」
「止める?」
「いや、それはさすがに冗談ですが、期限をつける。つまり、あるモノを購入し始めて、価格を決めてから1 年はコストが変動しても評価の対象にしません。こうすることによって、当初に高い金額で決めようというインセンティブは働かないはずです。1 年もすれば、多くの部員は担当品種替えをしていますから。
そして二つ目は、品種ごとにコストダウンの率を可変させる。コンサルタントに意見を求めてもよいし、各種のレポートを参考にしてもいい。重要なのは、あるコストダウン数値を、それぞれの担当の購買部員と討議し、決めて、それをコミットさせるんです。これで明確な指標ができる。最後の三つ目は、評価の大きな軸として他部門の意見を聞くということ。360℃評価と言われているものと似ていますが、部下・上司から評価するのではなく、業務で関わっている設計者や生産管理の方、同じ立場として評点をしてもらう。購買はサービス業として、他部門に情報を発信したりコーディネートする役割も担っています。そういうところは、コストではなく他部門の利便性の向上として現れてくることが多い。購買部員を他部門から評価してもらうということ――まさに、会社の中心にいるべき購買部門としてはやるべきことでしょう」