6-2.海外調達 ~当て馬見積もりをシュレッダーへ! 「新しい購買の「超」海外調達」~
その営業ウーマンは私に呆れ、「こんなに細かな検査が必要だとは、私たちを信用していないのですか」とまで言った。彼女は、日本企業がそれぞれに独特の評価基準を持っていて、ある一社で審査を通過したからといって、それが直接違う一社の審査を通過しないということは理解できない様子だった。
さらに、よくないことはプロジェクトの人間(=私)と実務担当者(=品目のバイヤー)が異なったことだ。私が、その中国製品の採用を推進していたとき、一方ではその実務担当者はその中国サプライヤの見積りを片手に現行の日本のサプライヤの価格交渉をしていた。要するに、安い見積りをチラつかせて現行コストを下げようとしていたのだ。「バカな」と私は思った。
それでは、「今私が行っていることは、単に当て馬見積りを作り上げていることじゃないか」と思ったのだ。そのことを実務担当者に言いにいくと、年上のそのバイヤーは言い切った。「だって、これが一番コストダウンする近道だろ」と。「それは、『安価なので採用を検討したい』と言ってしまった相手に説明がつかない」と反論してみてもムダだった。「高い見積りのものを採用したって、仕方ないだろ」と言われるだけだった。
そして、そのバイヤーからはこう言われた。「大丈夫だよ、あっちだってそんなに簡単に採用が決まるとは思っていないし、こっちだって今まで付き合いがないどこの馬の骨かも分からないようなサプライヤと取引開始するはずないだろ」と。この人には、私がその評価をまさに汗をかきながら行っている担当者だと知りながら、この発言がどれだけ失礼に値するかを全く理解しない様子だった。
その後、私は散々書類を出させた挙句、中国のそのサプライヤに対して「当初は安いと言っていたが、やっぱり安くないので採用検討を中止したい」という通常では理解することができない(と私も思っていた)内容の連絡をした。 きっと、もうそのサプライヤは付き合ってくれることはないだろう。もちろん、そのサプライヤから二度と連絡が届くことはなかった。その後、このことをある先輩バイヤーに相談したが、そのときも「でも現行サプライヤのコストが下がったってことは効果があったじゃない」と言われた。
私が言っていることは、なかなか普通のバイヤーには理解されることがなかったようだったので、私は反論せざるを得なかった。「そんなに当て馬見積りが欲しければ、偽造すればいいじゃないですか」。私はこのとき言ったことは今でも正しいと思っている。必死に見積りを出してくるサプライヤをダシに使うよりも、偽造した方がマシだからだ。それは、サプライヤに対する最低限の礼儀でもあり、長期的にそのような見積りの使い方をしている購買部は信用されることがなくなる。
思えば、バイヤーの真の目的は、グローバル調達額を増やすことでは決してない。短期的なコストダウンを、当て馬見積りによって成し遂げることでも決してない。まずは、何をどうするのかを強く決定するべきではないか。大きな地図を作り上げ、目的地を指し示すべきではないか。
・ どの品目を対象とするのか
・ どの生産地では、どの国のサプライヤの製品を使うのか
・ どの程度の量を目論むのか