5-1.購買オペレーション ~バイヤーは買い物で萌えろ 「バイヤーは奥さんとの買い物で会社経 営を考えろ」~

「お前のせいで全てを台無しにする気か!!」

 

ある生産管理の担当者は、電話越しにバイヤーに対して脅迫を始めた。製品の発注に関する電話でのことだった。その生産管理の担当者は突然必要になったものをすぐに入手する必要があった。そのためにはどうしても緊急の発注が必要だった。もとはといえば、設計が仕様を決めるのが遅かっただけなのだが、もうこの期に及んではそういうことを言っている場合ではなかった。

 

あとは、いかに早期にモノを入手して、ラインに流すか。そういうことを考えるしかなかった。納期設定としては「明日にでも必要」。だから購買部門にはすぐさまサプライヤに電話をしてほしい。そして、仮の注文番号をとってサプライヤにFAX をしてほしい。だが、その生産管理が電話した先のバイヤーは杓子定規に、あることを繰り返し言うだけだった。

 

「そういう先行発注はできません。正規の手続きを踏んで、早く電子上で処理をして下さい。そうしたらこちらも納期をフォローすることができますので」その生産管理の担当者は何度も購買担当者の説得を試みた。どれだけモノが早く必要か。どれだけ困っているか。どれだけこの製品の客先が重要か。

 

しかし、バイヤーの答えは同じだった。「お前なぁ。いい加減にしろよ」。そう生産管理の担当者は怒りの声を上げバイヤーに対して言ったのだった。「お前のせいで全てを台無しにする気か!!」バイヤーは、20 歳ほども年の離れた年配の人間からそう言われたのだから、動揺せざるを得なかった。だが「いや・・・そういわれても、決まりですので」とささやかな反論を試みた。

 

しかし、すぐさま強引な脅しがやってきた。「わかった。お前のせいでラインを止める気だな。そうなれば、どういうことになるか分かってるんだろうな」そのバイヤーは大変な思いをして、なんとか電話を切るのが精一杯だったのだ。そのバイヤーは私だった。某有名メーカーのERP システムが導入されて数ヵ月後のことだった。そのERP は各所で有名で、色々な雑誌に取り上げられていた。その数ヶ月の間に、このような多くの経験をすることになった。発注と経理関係のデータが全てオンライン化になったのだが、それに伴う多くの弊害を見ることになった。

 

発注データは全てEDI として相手先企業に送られる。EDI 対応ができない企業には、オンライン情報が自動的にFAX データとなり送られる。この場合にも、こちらが発注書を紙として出力することはなかった。もちろん、紙で溢れかえっていた購買部の中は「ペーパレスオフィスを目指そう」という掛け声のもと、紙の注文書を見ることもなくなっていった。生産管理のデータと同期化した発注が自動的に出ていくため、無駄な発注もなくなり、在庫も適正化が図れるはずだった。

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