5-2.購買オペレーション ~バイヤーは買い物で萌えろ 「バイヤーは奥さんとの買い物で会社経 営を考えろ」~
しかし、現実には購買部のもとに「どうしても必要なものだが、電子上で処理をするには時間がかかりすぎる。いますぐに発注したいのだが、どうしたらよいだろうか」という問い合わせが多くなっていった。
ある日などはその問い合わせだけで忙殺されたこともある。次々にかかってくる発注関係の電話は鳴り止まず、しまいには上手くいかないことを私怨として購買部にぶつける人間まで出てきた。
そういう電話には、「ルールを守ってプロセス通りの業務をしてください」という対応マニュアルなるものまで用意された。「そういう電話は無視しろ」という上司までいた。「正しい処理をしているのだから、そのように言ってもいいだろ」と。正論は正論でいいのだが、その正論と現実の間に挟まれた購買担当者がそこにはいた。
私もそうだった。多少無理してでも、ルールを守ろうとすればいつかはきっと改善の兆しを見せるだろうと思ったのだ。だから、当初はルールを守るように多少強引でも原理主義的に先行発注や手書きの発注を拒んでいた。すると、次はサプライヤからちらほらこういう電話がかかってくるようになった。
「あの部署の○○さんから、こういう発注が入ったので納入しました。あの発注書はいつ届くのでしょうか?」
「発注?発注っていっても普通は購買しかやんないでしょう。それを他の部署から発注された?しかも納品した?」
「ええ、どうしてもお急ぎのようでしたから」
「どうやって納品したんですか?検収を上げるところも、発注書にリンクした納品書でなければ検収できないでしょ」
「いや、直接あの方に持って行きました」
「・・・」
こんなことが頻繁に起こったのだ。そこからひたすら、電子上で正確な処理をするように各部署に電話をせねばならなかった。そういうことを繰り返しても全く先行発注が減らないのだ。あるいはそれよりマシであるが、手書きの「緊急発注処理依頼書」が回ってくる。
しかも、遅れて発注書が出ても、それが先行で納入したモノとつながっているのか私もサプライヤも分からない。当然、もう納品してもらったものを、正式に発注書を出しただけにも関わらずダブルで納品してしまうサプライヤが続出した。そういう処理で日々奔走していた。私はことある度に、先行発注をしようとする人々に、先行発注や手書き伝票を止めさせようとした。しかし、こういうことを止めさせようとしても、相手は伝家の宝刀を持っていた。
「ラインを止められない」という一言だ。繰り返すが、緊急といっても多くの場合は設計者が仕様を決めるスケジュールが遅れたに過ぎない。もちろん、設計者への過酷な作業依頼は十分理解しているつもりだが、その遅れを一方的にこちらに責任転嫁されてはどうしようもない。