5-3.購買オペレーション ~バイヤーは買い物で萌えろ 「バイヤーは奥さんとの買い物で会社経 営を考えろ」~

こういうことを当時、自動車メーカーに勤めている友人に話すと、「必要なときに納入してもらうってことは当然ではないか」と切り返された。私は「あのねぇ、そうやってジャストインタイムの納品をしてもらえるところなんて自動車メーカーくらいだよ」と皮肉を言ったが、分かってはくれなかった。

 

結局は、自動車メーカー以外の大半の企業では、その企業だけのためにサプライヤが専用ラインを持っていることなど少なく、サプライヤから期限通りに納入してもらうためにバイヤーは日々苦労しているのだ。ある方面では、「自動車メーカーが崇高な納入システムを構築しており、それを模倣すべきだ」という論調が存在するが、それはごく限られた範囲で特殊な条件を満たしたときのみに実現するということを忘れてはいけない。

 

話を戻そう。こういうことばかりしているから、期末の棚卸しは最悪だった。私の担当品種の棚残は、ゆうに数億円以上の「余裕在庫」を有していた。つまり、「急ぎだ。急ぎだ」といって各部署が先行発注を繰り返していたのは、結局は使われなかったか、在庫を十分に調べることなしに、あるいはどこに在庫しているのか分からなくなって発注を繰り返していただけだったのだ。

 

「この在庫をどうするのか、○日までに決定してください」という紙が届いたときには「これらの要求を出した奴らに聞いてくれ」と言いたくなったくらいだ。私は迷わず、品目を見てそのほとんどに対して「廃棄」に丸をつけ提出しようとした。しかし、「ちょっと待て」と思った。これでは、何も改善しないのではないか、と思ったのだ。「改善を促すためには、多少のショックも仕方がない」そう考えた私は全ての廃棄額をそれぞれの部署ごとに細分化し、どれだけの額の無駄を繰り返したかを一つのレポートにまとめた。誰にも頼まれていないのに他の購買担当者分のものも合算し計算した。

 

私がやることは明確だった。各部門の部長に向けて、「どれだけルール違反によって会社の金が浪費されたか」を流した。これは当然多くの反響を呼んだ。数千万円の売り上げすら、必死になっている時代に数億を無駄にしているのだ。反響を呼ばないはずがない。しかも、ルール違反によってだ。それはこういう感じだった。「緊急連絡!!今期の不要発注が過去最大」。ある人は「このようなシステム自体がおかしいのではないか」と言った。

 

ある人は「ルール違反を認めてきた購買にも責任がある」といった。ただ、一つの大きな改善があった。それは、ある日を境に先行発注が完全になくなったことだ。おそらく「当内容は社長室にも連絡いたします」と書いた最後の一文が効いたのだろう。もちろん、そういう予定はなかったが、多少のハッタリは仕方がない。しかも、そういう無駄な発注が過去最大かどうかも知らない。

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