7-5.開発購買 ~あなたと一緒に仕事がしたい! 「新しい購買の設計者意識革命」~

「そんなに毎回こちらから話すネタなんてあるのかな」

 

「仕事を毎日真剣にやっていたら、設計者に伝えたいことなんていくらでも出てきますよ。このサプライヤのDRAMは入手しづらい、とかそんな情報でも構わないんです。それにそういうことを開催することで部員に、サプライマーケットの専門家であるべきことを自覚させるんです」

 

「二つ目は?」

 

「月報の発行です」

 

「月報?何のために?」

 

「品質管理の部門は毎月、納入品の不良割合をまとめて社内発表しています。営業部門だって、各製品の売り上げを社内発表しています。私はなぜ購買部門が社内に向けてもっと情報を発信しないのか疑問でした。これからは毎月『購買月報』なるものを発行してはどうでしょうか?PDF で配布すればお金もかかりません。その月のVA 事例とか、コストダウン事例とかを報告していくんです」

 

「面倒だろう。しかも、あえてそういう事例を出したって・・・」

 

「いや、資料はその都度作っていますから、それをまとめるだけですよ。しかも、もう一つ目的があります。ほら、意外に設計の部門間では情報のやり取りがうまくいっていないでしょう。その設計部門全体を見回せるのは我々購買部門だけなんです。ある設計部門で実施したVA 案を、違う設計部門は全く知らなかったりする。知っているのは購買の担当者だけです。それを社内で報告してあげる。購買は社内の最強のコミュニケーションツールとなるんです」

 

「しかし、最初の開発購買とは離れていないか?」

 

「いや、そうとは思いません。社内の壁を取り払って、まずはこちらのことを設計者に認識してもらうんです。そして、バイヤーが設計者に対してモノを申せる状況にしていく。そしてその過程で、バイヤーがサプライマーケットの専門家になっていく。これが開発購買実現の一番の近道だと思うんです」

 

「・・・じゃあ今の開発購買課の役割は?」

 

「・・・。旧来の意味での開発購買課のままであれば、不要になるかもしれません」私はややこしい話になりそうだったので部長室をあとにした。

 

「まずは企画案をまとめてみます」とだけ言った。机に戻ると、私は企画案を書き出した。設計部門との定期ミーティングのこと。そして月報の発行のこと。「購買月報」については自分で編集をやってみるか。いや。そうだ、入社三年目の和田がいる。彼なら、文章も上手い。

 

しかも、この会社に入る前はジャーナリスト志望だったといっていた。和田なら喜んでやってくれるはずだ。しかも、若いバイヤーが社内にアピールできるチャンスにもなる。「和田君。ちょっと来てくれ」。私は早速彼を呼んだ。ジャーナリストとして、ペンで社会に訴えることはできなかったかもしれない。

 

だけど、ペンで会社を変えることはできるかもしれない。

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