7-4.開発購買 ~あなたと一緒に仕事がしたい! 「新しい購買の設計者意識革命」~
そう思った私は今回も部長のもとに走った。
「バイヤーは常に設計者と協同しながら、常に設計者の期待を超えなければならない」。そういうことが自然にできる仕組みをつくらねばならないと思ったからだ。
「部長、本日は新しい開発購買の形についての提案なんです」
「開発購買?開発購買課がやっていることを変えるっていうことか?」
「確かに、開発購買課というセクションをウチは作っています。だけど、別に開発購買課の仕事を変えたいというわけではありません」
「というと?」
「開発購買課っていうのを作っていますが、そもそもその課の存在自体に疑問があるんです。開発購買課というところだけが開発購買を行えるようなイメージがあります。でも、それは違うと思うんです。部員の誰もが、本来は設計者とともに製品を作り上げていかねばならないし、それは開発購買課のメンバーだけがやるわけじゃないですよね」
「確かにそうだ。だけど、そもそもあの課は、多くの部員が簡単には設計に入り込むことができないから作られたんだ。だから、あそこのメンバーは設計者中心になっているだろ」
「そう、そこが問題と思っているんです。今、多くの製造業が言っている開発購買とは技術者上がりの人たちを購買の中に配置転換しているだけのことです。でも、それじゃぁ結局は昔得た技術力のみを売り物にするだけで、『購買のこともちょっと分かる技術屋』を量産しているだけです。本来の開発購買とは、購買が知りえる情報を設計者とシェアしていくことで、その過程を通じてよりよい製品を企画・生産していくことだと思うんです」
「もっと分かりやすく言ってくれないか?」
「では、こういうことです。これまでの開発購買は『技術のことを分かっている人を購買の窓口として置くこと』だったと思うんです。これからの開発購買は『サプライマーケットの情報を設計に提供すること』を目指さなければなりません。設計者の領域が分かる人間ではなく、購買の領域の情報を発信してモノを申せる人間を揃えていくことです」
「それは、今だって電子調達やデータベースでやってるだろ?」
「いや、あんなのを整備しただけで開発購買なんて実現できませんよ。購買と設計が離れている状況で、あんなの設計者は誰もつかっていないでしょう?」
「どうやったらいいと?」
「幼稚ですが、笑わないで下さい。私の提案は二つだけです。まずは、設計者と定期的な懇談会を持つことです。購買はコミュニケーション能力が大事だとよく言われていますが、実際に設計者とコミュニケーションできているバイヤーなんてほとんどいません。コストダウン定例会、でも定例VA 会でも構いません。そこで、毎回打ち合わせをして、『現在どういう市場動向か』ということや『どういうサプライヤを注目すべきか』というのを伝えていくんです。そしてもちろん相手からの要望や意見も聞いていく。極端な話、設計と仲良くなるだけでも十分な成果ですよ。だって今じゃ、相談されることすらないわけですから」