7-3.開発購買 ~あなたと一緒に仕事がしたい! 「新しい購買の設計者意識革命」~

そして新製品情報があったら毎回送ってあげる。設計者の困りごとがあったら、率先して聞いてあげる。率先して問題解決のためにアクションを起こす。ときには、多少無理なコストでも、大きな目標の前には譲歩することもやった。私がやったことはこれだけだった。これだけだった。何千万円のシステムでなく、今あるパソコンだけで出来た。そんなもんだった。

 

それだけで、多くの設計者が意見を聞いてくれた。メールをくれた。電話をくれた。会議に呼んでくれた。新しい製品の検討に際して、私の担当部品でないサプライヤのものまで海外工場監査に呼んでくれた。製品の企画会議にも呼んでくれた。サプライヤも、設計者とつながっているバイヤーということでどんどん提案をくれるようになった。どんな小さな提案でも無視せず設計者に投げることによって、情報の横通しができた。開発中の製品に採用されたこともある。

 

「あなたに任せるので、この仕様のものを買ってきてくれ」と全面的に信用されプロジェクトを進めたこともある。海外からの取引に関しても真っ先に相談してくれるようになった。これ以降、私は「バイヤーの社内的な顔、社外的な顔をアピールすること」を意識しないコンサルタントのことを根源的に信じることができなくなった。繰り返すが、システムを導入するだけで全てが解決することなどありえない。

 

バイヤーがちゃんと「顔」を持ち、設計者などの他部門に発言できる環境と能力を兼ね備えてこそ、開発購買が実現できる。全社が一体となった上流からの開発環境が整備できる。設計者に対しては、「このバイヤーと付き合えば、こんなにいいことがあるのだ」と、「このバイヤーと付き合えば、これほどメリットがあるんだ」と思い知らせねばならない。

 

普通のバイヤーであればあの程度だったものが、自分と付き合えばこれくらい成果が上がりますよ、と認識させねばならない。そして、そのようなバイヤーを量産するような仕組みを作り上げていかなければならない。以前「最適購買」という言葉が流行った。適切な時期に、適切な量を、安価に調達すること。これを目指すべき「最適調達」と人々は呼んだ。しかし、これからはそういうことは当然として、それ以上を目指さねばならない。最適を超え、関わる人々に感動を提供する。それはwin-win の関係にも似た、脱「現状購買」の試みである。

 

「バイヤーは最適購買ではなく、感動購買を目指せ」

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