7-2.開発購買 ~あなたと一緒に仕事がしたい! 「新しい購買の設計者意識革命」~
しかし、結果は全く使われなかった。
設計者は誰も見なかった。私の業務は徒労に終わった。設計者は私に「こういう部品を使いたいんだけれど」といって問い合わせをかけ続けた。サプライヤにも問い合わせを続けていた。そして、標準部品というものの存在を知ってか知らずか、使いたい部品を使いたいように採用し続けた。よく考えれば当たり前のことだった。私の部品だけではない。全ての部品にわたってそのweb ページは使われなかった。
思いつくだけでこれだけの失敗点がある。
・バイヤーがそもそも製品知識に乏しく「標準部品」など選択できるはずもなかった。
・バイヤーが設計と仲良くもなく、勝手な思いが先行していた。
・カタログ、といってもいつ変更されるか分からず、最新情報はメーカーに聞かねばならないという当然のプロセスが無視されていた。
・「標準部品」など日々変化するくらい技術の進歩速度は速い、という認識がなかった。
・全社的な合意がなかった。当然であった。当時を思い出せば、コンサルタントがやってきて、「はい、こういうシステムが出来れば在庫もなくなりますよ。部品の集約ができますよ」と言っていた。そして、私の会社はそのシステムを発注した。だけど、そんなの簡単には上手くいくはずがないのだ。失敗するに決まっているのだ。
この試みは当時、イントラネット上のページから部品を選択し、そのまま発注できERPにつながるシステムであったのだが、一体会社はいくら使ったことだろう。この誰も使わないシステムにどれだけ時間をかけたことだろう。システムを導入するだけで変革を起こすことが可能である、という「素晴らしい」思い込みの経営者が多くいるからまだこういう商売が儲かるのだろう。
当たり前だが、システムを導入するだけで設計者へ購買のメッセージを伝えることができるはずもない。e カタログやインターネットだけで標準部品を選定させることができるはずがない。開発購買など実現するはずもない。ただその後、私は解決方法を生み出した。考えれば、単純なことだった。開発購買という言葉がかっこいいので難しく考えがちだが、そんなことはない。
単に製品の企画・開発段階から購買の意見を聞いてもらうことができればいいだけだ。そういうができていないので、開発購買などという言葉が必要とされたのだ。購買と設計が情報のやりとりをちゃんとできていればよいだけのことだ。私がやったことは、単に設計者に「どういう部品を使おうか」と訊きに行き議論するということだけだった。何かあれば、必ず出向く。対面して話す。何回か議論して、エクセルで表を作り、毎期ごとにサプライヤからコストを入力してもらう。そして、それを毎期ちゃんと設計者たちに送付する。