9-6.購買アウトソーシング ~購買パラダイムの変換を! 「新しい購買の新「進化論」」~

2日後、社長秘書に無理やり頼み込んで、社長の時間を10 分だけ空けてもらった私は社長室の前で味のしないコーヒーを飲んでいた。

 

この二日間、人材関係の本をまとめて読んでみた。私は、自分の確信をより深めていた。各個人への客観的な評価はやはり必要だ。それも金銭的報酬だけでなく、各個人の正当な評価から導かれるモチベーションは、何より必要とされている。そう頭の中で思いをめぐらせていた私のもとに秘書が呼びにきた。

 

「どうぞ、お入り下さい」。ドアを開けると、こっちを振り向いてくれない社長がそわそわと書類をめくっている。

 

「お忙しいところ、10 分お時間を頂き、ありがとうございます」。私は、早口で社長に説明を始めた。購買部員の評価制度に関すること、トップ部員の社内地位向上によるモチベーションの付加、そして優秀な若手を引き留める施策。一通りのことを説明した後に、部長が不満そうにつぶやいた。

 

「それなら、もっと先にやることがあるだろ?」

 

「先に、とおっしゃいますと?」

 

「評価制度なんて導入しなくたって、結果は分かっているよ。私としては今の購買部員のほとんどが不要だと思っている。今の2 割でいい。あとの8 割の人員の仕事はアウトソースに任せる。キミだって、バイヤーの呆れる点ばかりを指摘してただろ」

 

「いや・・・。あれは、最終的にはバイヤーの地位向上を目指した・・・」

 

「いいんだ。分かってる。だけど、私がほとんどの購買部員は不要だと思っていること、これも事実だ」私は頭を殴られたような気がした。

 

「購買部の8 割は不要な人材だ」。映画の名セリフかのように、私の頭を駆けずりまわった。今までの自分の活動は、結局のところ仲間たちを削減する手先となっていたのか?確かに、購買の中には不要と思われる人たちがたくさんいる。

 

でも一方で、私の目的はそういう人たちの変革であり、削減ではなかった。私は混乱していた。社長の部屋を出たとき、ドアの閉まる音がこれまでになく大きく響いていた。

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