4-2.ソーシング ~どん底からの逆転ホームラン 「バイヤーはすごい買い方の実践で会社の顔になってみろ」~
あえて言ってしまうが、業績がおもわしくない会社は意外に当たり前の管理すら出来ていないことが多い。内情を聞くにつれ、こんなことすらできないのかと驚くことがよくある。自分の会社の低迷を、市況のばかりにしている会社は、外部からの購入品について想像もつかないほどお粗末だ。
例えば、たまにそういう業績の良くない企業のバイヤーと付き合って見積書を見ながら「なぜこの箇所はこんなに高いのですか?」と訊いてみても、「いやぁなんだか、あちら(サプライヤ)も大変みたいで、こんなもんなんですよね」などという言葉が返ってきたりすることがせいぜいだったりする。「こんなもん」とはいったいどういうことなのか、説明を求めても無駄なだけだ。
社員の給料は、いかにその社員たちが「乾いたタオルを絞る」ような努力が続けられたかに比例し、「無根拠な価格」を放置するかに反比例する。こう言うのは言いすぎだろうか。前述の課長は、一般財購買というマイナーな部署に属しながらコストを削ることを少しも休めはしなかった。一見華やかに見える業界でも、その中では身を削るような努力が続けられている。地味な仕事はどこの会社にでもあり、そこでは普通の人が想像できないくらいの執拗さと徹底さを持って業務が遂行されている。
バイヤー一人一人が自分の担当品について、自分自身の買い物であるかのように価格交渉を頑張り、購入品について考えることが出来ればこれ以上生産性が高まることはない。それは、個々人が趣味で集まっているNPOの中で、ものすごい業績をあげているところがあることからも明らかだ。そして、当たり前だが、バイヤーの価値とは「いかに品質の良いものを、安く買えるか」にかかっている。
しかし、バイヤーはそこまで業務に徹底的に打ち込む人の割合が少ないから、ある会社の営業部などは「購買・調達部門は相手にせず、なによりも設計部隊や生産現場に向かい営業する」と断言している。ここには、次のような思惑がある。この営業部はもちろん言わないだろうが、本音ではこう考えているのだ。
・ バイヤーは何を買うかを決定しない(できない)
・ 不要なものであっても、バイヤーの社内での力は弱いから、現場が「買いたい」といったら買うだろう
・ つまりバイヤーに売り込む意味はない私はこの営業部を批判したいわけではない。むしろよく分かるといいたいぐらいだ。皮肉ではない。少なからぬ購買部門を見るにつけ、ここには売り込んでもしかたないだろう、と思うところが多い。サプライヤを決めるルールは無視されているし、コストのことはよく分かっていない。
加えて、自分たちが物事を決めないといけないという強い意志を持っていない。私が営業マンだったら、最初からバイヤーなどには売り込まないだろう。
設計者か現場に向かう。モノも覚えない、わからない、コストのことも他社比較でしかわからないようなバイヤーなど見向きもするものか。もっというなら、優秀なバイヤーであれば、設計者や現場から信頼されているはずだからおのずと紹介を受けるはずである。会議を開催しても、そのバイヤーならば社内から呼んでもらえるだろう。
しかし、いったいどれだけのバイヤーが社内から指名されて呼ばれているというのだろうか。社内の他の部署が力を借りたがっているのだろうか。どれくらい存在を期待されているだろうか。たいていは「設計さんがこういっていますから」という言い訳でサプライヤ選定の権利を放棄するバイヤーばっかりだ。一、二回はいい。しかし、全ての発言に対して、「設計さんが」という頭文字がついてくることが多いのだ。