展示会などで新しい取引先候補を調べているとします。一般的にはその取引先の企業の情報を調べ、従業員の数などをヒアリングします。売上高とか利益だとかISOの取得有無だとかを調べます。もちろん工場がどこにあるか。それらも重要なファクターでしょう。
ところで昔話を。私が22歳の時、不思議だったのが「なぜ従業員の数を調べる必要があるか」ということです。先輩に聞いてもよくわかりませんでした。例えば「売り上げが〇〇億円の会社があるとして、従業員は100人が良いのでしょうか、95人が良いのでしょうか、1000人が良いのでしょうか」。それらの答えがわからない以上は、聞いても意味がないと思ったのです。
当時は、その疑問自体がわかってもらえませんでした。哲学者が言うように、そもそも質問の問題意識自体が理解できないひとは、まったく理解できないのです。そこで私はある方法を編み出しました。それは従業員の数と売上高を比較するというものです。
これは経営的に考えればわかりやすいでしょう。一人を雇うわけですから、給料を払うために、その分の売り上げが見込めなければいけません。そして一人当たりの売上高が高ければ高いほど良い企業に決まっています。そして低ければ低いほどだめな企業と定義付けることができるでしょう。
では、そこでどのような数字を使えば良いのでしょうか。そこで私が以前より提案していたのは従業員一人当たりの売上高が1,300,000円くらい(あえてここから単位:百万円ではなく、数字で書きます)が適切だということです。しかしこれにはちゃんとした裏付けをご説明していませんでした。そこで今回いくつかのデータからこの一人当たり売上1,300,000円が正しいかを見てみましょう。
題材とするのは中小企業白書や、あるいは商業統計などの公的なアンケート、並びに公的なデータです。
中小企業白書ではズバリ一人当たりの売上高を計算しています。グラフを見てください。
小さかったら拡大してご覧ください。
その結果、年間あたり一人の従業員が稼ぐ売上高は平均32,000,000円としています。しかしながら見ていただく、通りこれは対数正規分布をとっています。難しく考えないでください。対数正規分布とは左に大きく傾いてる分布であり、一般的には平均値が意味ないとされています。
したがって釣鐘上の、もっとも頂点のところを見てみましょう。すると16,000,000円から17,000,000位が妥当なレベルとわかります。皆さんが付き合っているのは中小企業と前提で話を進めていきました。しかし、サプライヤが大企業の場合はグラフが異なりますので注意してください。
そうしますと16,000,000円から17,000,000円くらいと、12ヶ月で割って、1ヵ月あたりに計算し直すと、やはり1,300,000円の近辺でもさほど無理ではないとわかります。
ところでこの中小企業白書は、有名な白書ではありますが全数調査をしていません。全数調査とは、文字通り日本にある中小企業全体に対して調査を行うことです。しかしながら中小企業白書では予算の関係もあり全数調査をしていないのです。
そこで全数調査を行う、商業実態基本調査を見てみましょう。
そうすると、ズバリ中小企業では17,850,000円と書かれています。しかし、残念ながらこの平均の元データが分かりません。この結果を鵜呑みにしていいのかが分かりません。これはデータが捏造されているのだとか、そういう意味ではありません。分布がわからないので、平均を使っていいかわからない、の意味です。
もともと製造業その他の定義とは、ここに書いている通り、資本金の総額が3億円以下の会社を指します。全体のデータがないのですが、同じく全数調査を行った結果も対数正規分布になっていると仮定すれば、やはり平均を高めに算出されるのが当然です。
ここからは強引ですが、17,850,000円からいくばくかを差し引いた、前述の16,000,000円から17,000,000円位が妥当なレベルではないかと(絶対的な根拠はありませんが)判断できます。そこでたどり着くのはやはり一人当たり1,300,000円水準の計算です。
従業員の数✕1,300,000円✕12ヶ月
これを売上高と比較し、売上高が高ければ優秀。低ければイマイチ、という水準でいきましょう。
(了)
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