最近、どちらかといえば組織的にも整っていない中~小規模の企業の調達・購買部門担当者に対するトレーニングを行う機会に恵まれました。参加した企業の調達・購買部門は、
・調達・購買担当者数:1名~数名
・上司:他部門と兼任(社長や総務、経理部門)
といった極めて小さな規模の組織です。トレーニングに参加した企業の皆さまは、顧客ニーズ(主にトレーサビリティや取引先管理)によって組織を作ったものの、顧客ニーズに対応する(多くの場合は、報告書づくり)に明け暮れている方でした。そんな皆さんからの質問に「調達とか購買を何とかしろって言われても、どこから手を付ければよいのか、またどこまでやればよいのかがわからない」といった内容がありました。そういったケースに、まず確認すべき内容と、最低限進め方を網羅した内容でお伝えする連載にしました。
今回お伝えする内容は、規模が小さい企業ばかりが対象ではありません。規模の大きく組織的な購買を行っていても、たとえば「現状掌握に必要な4つの視点」は、バイヤ一人ひとりが自分の担当領域について理解が必要です。現状の掌握があって、はじめてこれからどうする?の部分へと歩み進められるのです。現状掌握以降は、次の内容で連載を進めてゆきます。
●現状掌握に必要な4つの視点
・購買内容
・サプライヤ
・業務範囲
・社内各種戦略(企業戦略の機能戦略)
●社内ニーズの確認と掌握
・購入品のQCD
・調達・購買部門/担当者への期待
・決算データ・業績
●問題と課題の整理
・QCDの問題点
・上位者/経営者ニーズ
・関連部門ニーズ
それでは最初のテーマです。
●現状掌握に必要な4つの視点
・購買内容
何よりもまず、調達・購買部門や自分がどんなものを買っているのか。買わなければならないのか「購買内容」の理解が必要です。この点は、業種によっても切り口が異なります。まずは大きく次の3つのくくりで購入品を見極めが必要です。
1.モノ
発注した結果で、製品や材料、部品といった「モノ」が納入される場合です。
-どんなモノか
-どれくらいの数量か
-購入価格
について、購入全体から振り分けてゆきます。これまでまったく購入内容の分析を行っていない場合、まず製品や材料、部品が納入されている購買案件が全体のどれくらいの「割合」を締めるかを理解します。
製造業の場合は、購入するモノが、お客さまへ納入されるモノへ取りつけられる、使用されるのか。それとも自社の工場内で使用されるのかによって分類します。お客さまの納入品に取りつく場合は「直接購買品」。自社で使用する場合は「間接購買品」と分類します。この2つの分類は、次回以降に行うデータ分析結果と掛け合わせて、自社の状態を理解するのに活用します。
2.サービス
発注した結果で、なんらかのサービスが提供される場合です。どんな企業でも、電話やインターネットを活用してコミュニケーションし、電気やガス、水道といった社会的なインフラを事業運営に活用しているはずですね。また生産したモノをお客さまに届けるときに運送業者へ支払う輸送費用も「サービス」に分類します。
「サービス」は「見えない」と称されますが違いますね。サービスを提供するためには、人や人によって操作された機械が動いています。したがって「サービス」とは、提供された内容の裏に、どれほどの人が動いているのかが価格査定のポイントです。
「提供される内容の裏にどれほどの人が動いているか」この視点は、実はモノを購入する場合も考慮すべきですね。調達・購買部門で購入する材料や部品も、サプライヤでは必ずヒトがなんらかの作業をして材料や部品にしています。形としては「モノ」を買っていても、価格を構成するコストの中は、製造に関わる人件費が含まれているのです。
モノの場合、買った物が手元にあったり、仕様書や図面があれば、どんなものを買ったのかを理解しやすいですね。理解した内容を数値=金額に置きかえもやりやすくなります。しかしサービスの場合「時間単価×工数」の基本はあったにしても、たとえば見積書で提示された数値分必要なのか、あるいは実際に行われたのかどうかの検証は、モノと比較すると難しくなります。これはモノと大きく異なる部分です。
しかしモノを購入する場合でも、その価格には割合の大小は別にしても必ずサービス的な要素が含まれ、近年その割合はどんどん拡大しています。いわゆる「経済のサービス化」によって調達・購買部門がうける影響です。これは、価格構成要素のブラックボックス化が進んでいるともいえます。
購入した内容がモノか、サービスか。モノの場合は、直接購買品か間接購買品かの見分け方ですが、まず見積書のタイトルや見積内容でモノなのか、サービスなのかを判断しましょう。モノに含まれるサービスは先送りします、まず2つに分類します。その上でモノについて、お客さまに納入されるかどうかで、直接購買品か間接購買品かを分類します。ここまで分類し、それぞれの購入金額を明らかにしましょう。
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(つづく)
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