バイヤー現場論(牧野直哉)

7.品質管理部門との関係

品質確保の取り組みは、発生させた不具合を市場に流出させない管理から、生産に必要な各工程において不具合を発生させない、仮に発生させても後工程に流出させない管理に進化しています。そういった進化を購入品の品質確保に生かすためには、サプライヤの各工程の管理状況の確認と同時に、自社への流入防止管理によるダブルチェックが必要です。

購入品の品質管理は、その責任部門が企業によって大きく異なります。品質保証部門にサプライヤの品質管理をおこなう機能を持っている場合もありますし、調達・購買部門にもっている企業もあります。どのような責任分担であっても、サプライヤ管理の主体は調達・購買部門です。品質保証部門と役割分担をおこなって、最終的に自社の顧客へ提供する製品の品質を担保するための取り組みを考えます。

①不具合品の自社へ流出入防止の取り組み

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サプライヤから不具合を流出させないために、生産各工程での確認や、出荷時の検査がおこなわれ、かつ正しく機能しているかどうかを、サプライヤ側に立って確認します。こういった取り組みは、調達・購買部門でおこなう定期的なサプライヤ継続採用審査とリンクさせて、品質保証部門と協力して品質確保を実現します。

そういった取り組みが機能していても、人間が介在する以上、ミスは発生します。そのミスを自社流入の水ぎわで防ぐ取り組みが受け入れ検査です。サプライヤの品質管理状況に応じて、検査頻度をコントロールします。不良率が低く、ほぼ良品しか納入しないサプライヤなら、受け入れ検査のインターバルを長くし、かつ抜き取りによる検査で、サプライヤの管理レベルの高さを活用します。この取り組みでは、個々の購入品の品質状態と同時に、サプライヤ出荷検査時の不良率の変化をモニターして、自社の受け入れ検査実施頻度の判断基準とします。

サプライヤ出荷時の不良率のデータは、サプライヤと信頼関係がなければ提供されません。また、不具合の発生を一方的に責めて、再発防止策をサプライヤでのみ検討し実行させる姿勢では、発生した不良の内容や件数といった詳細は公開されません。「不具合は発生する」を前提条件として、自社から顧客に不良品の流出防止を共通の目的にした協力体制の構築を、調達・購買部門は推進します。

②変化への対応

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毎日同じ作業を繰り返していても、天気や気温、作業員の体調や原材料の状態は、毎日違います。そういった違いの中で、発注内容に記載された仕様や機能に代表される品質の維持をサプライヤへ求め、自社は監視し品質を維持しています。問題はわずかな変化ではなく、ふだんとは異なる「大きな変化」がサプライヤで発生している場合です。

「従来担当していた作業員が、体調を崩して別の作業員が担当した」
「サプライヤの社内改善によって、工程の一部を変更した」

こういったわずかな変化とは違うものの、自社へ報告するほどでもない変化は、不具合発生の可能性が高まる瞬間です。これは、変化の内容を規定して、サプライヤから自社へ報告を求めます。前者の作業員の変更は、必要性に応じて作業者認定をおこない、スキルレベルを管理して品質確保をおこないます。

工場を変更する生産移管や、生産方法の変更といった大きな変更が発生する場合は、自社への報告をルール化します。そして過去と同じ品質が確保できているかどうかを文書やサプライヤを訪問して確認すると同時に、受け入れ検査でも検査の頻度をアップさせ、サプライヤでの対応の妥当性を検証します。

③不具合発生時の調達・購買部門の役割

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これまでに述べた対策を施しても、サプライヤからの購入品で不具合が発生する場合があります。厳格なスケジュール管理をおこない、在庫をもっていない場合は、購入品の不具合は、自社の顧客の契約納期に大きな影響をおよぼします。

不具合対応は、緊急対応と抜本対応に分けて考えます。緊急対応は、不具合を解消した購入品の確保です。不具合を発生させた製品を手直しできる場合は、修正スケジュールの立案と、自社内工程の調整をおこないます。守るべきは顧客の契約納期で、その順守に全力を傾けます。

恒久的対応には二つあります。まず、再発防止策の徹底です。発生させた不具合の原因を究明し、二度と発生させないための対策をサプライヤに立案・実施してもらいます。自社では、正しい対策を施しているかどうかの確認をおこないます。

また、不具合の発生内容によって、対応には自社でも費用が発生しています。調達・購買部門では、外部支出、内部負担の双方で、不具合の発生によるコストインパクトを算出します。算出した金額は、サプライヤの責任度合いによって、実際に請求します。請求しなくても、金額規模と内容を明らかにして、サプライヤの評価には確実に反映させます。

(つづく)

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