バイヤー現場論(牧野直哉)

8.管理(サポート)部門との関係

総務や人事、経理部門と調達・購買部門の関係は、2つの側面を持っています。一つは、購入要求部門として調達・購買部門の前工程であること。もう一つは、調達・購買部門の業務内容やアウトプットが、各部門での業務に影響を与えることです。したがって、各部門に調達・購買部門の業務内容やマネジメントサイクルの理解をうながし、双方がリソースを活用して、企業目標の達成へむけた協力体制を構築します。

① 総務部門との関係

総務部門との関係は、法規制や法律対応に関するサポートの窓口である点が、もっとも重要です。下請代金遅延等防止法順守や、契約書や覚書の適法性の確認は、コンプライアンスの基本となります。近年では、CSRや環境面での配慮の必要性が高まっています。

また社内各部門が円滑な企業運営をおこなうためにも、オフィスに代表される設備の維持管理をおこなう部門です。支出額も比較的大きいため、適正な支出管理に調達・購買部門のサポートは不可欠です。総務部門からの支出の実態をつかんで、支出先の代替案を提案や、費用支出に対する効果の最大化を目指すサポートをおこないます。

 人事部門

企業のもっとも重要なリソースである社員の適正配置をおこない、社員のレベルアップをはかる責任を持つ人事部門。経営環境と事業内容の変化によって調達・購買部門に必要なスキルも変わっている点は、人事部門に伝えなければなりません。伝達する目的は二つあります。

一つ目は、在籍している社員のスキルアップを目指した教育プログラムの整備です。従来おこなわれている契約締結や、交渉実践に加え、自社の置かれた状況を踏まえたプログラム整備を要望します。海外展開をおこなっている場合は、異文化コミュニケーションや、マネジメントといった内容を加え、生産管理部門や物流部門と共同で、サプライチェーン全般をマネジメントするためのプログラム設定を依頼します。

二つ目は、必要な人材を外部から確保する場合のスキル設定です。人事部門は、少しでも優秀な人材を外部から獲得するために、あれもこれも対応可能な調達・購買スーパーマンと思うような人材を外部に求めます。どういったスキルをもった人材が不足しているのかを突き詰め、不足している専門性の高い人材の採用が、採用による波及性も高く、速効性も期待できます。人事部門には、調達・購買部門のニーズを確実に伝えて、適切な採用活動をサポートします。

 経理部門

経理部門は、購入要求部門としてよりも、調達・購買部門で管理する費用支出と、コスト削減といったアウトプットに関連した関係を意識します。また、購入品が納入された後に、円滑に契約条件にそった支払いを実行するのも経理部門の任務です。

(1)実績情報の提供
調達・購買部門の業績評価は、自部門でもおこない、結果の検証は経理部門から提供されるデータでおこなわれます。調達・購買部門で「実現した」として報告されたコスト削減額が、本当に実現しているかどうかを判断できるのは、経理部門の集計結果です。もし、調達・購買部門と経理部門の集計結果に違いがあれば、内容を明確にし、将来的な対応を協議します。

こういった情報以外にも、予算と実行管理の一貫として、各部門における外部支出先と額の集計もおこなっているはずです。調達・購買部門が自社にない外部リソース活用のプロであるならば、調達・購買部門の関与していない外部支出には、サプライヤ選定から、価格交渉と行ったプロセスのサポートを提案する元データになるはずです。

経理部門がおこなう決算は、その結果で一喜一憂するだけではなく、次の会計期にどういった改善をおこなうかを読み解く重要なヒントが満載されています。そのためには、調達・購買部門で会計情報を読み解く教育だけでなく、自社の経理の仕組みに関するレクチャーを受ける機会を設けて、経理部門の業務内容の理解も非常に重要です。

(2)コスト削減基準の設定
調達・購買部門への社内のもっとも大きな期待は、購入コストの削減です。しかし、削減するためにはスタート地点を設定しなければなりません。このスタート地点は、予算で設定されます。

予算設定のプロセスに、調達・購買部門が参加しているかどうか。一方的な都合を考慮した予算ではなく、サプライヤや市場環境を踏まえた予算とするために、調達・購買部門も予算設定プロセスに参加します。例えば、原材料費市況の高止まりが続いているなかで、購入品によって購入価格の低減ではなく、値上げの抑止がテーマになる事態も十分に想定されます。売価アップが簡単ではないといった意見に押しきられるのではなく、コスト削減も非常に困難であり、サプライヤからの妥当性のある値上げは、安定供給の観点からも受け入れざるをえないといった主張をおこないます。当初から達成の可能性が少ない予算よりも、簡単には達成できないけれども挑戦の価値があるバランスの取れた予算設定には、調達・購買部門が声を出さなければなりません。市場環境や、市況の変動といった外部環境の要因を分かりやすく経理部門に伝えて、理解を求めます。

●対等な社内地位の確立を目指して

調達・購買部門の社内てきな地位が低いと嘆くバイヤーが目立ちます。では、なぜ地位が低いのか、その理由を考えました。地位の高い低いは、どのようなタイミングに判明するのか。それは、自分達の仕事を社内関係者から理解してもらえなかった、話も聞かずに一方的な目標値を押しつけられた、そんな場面の積み重ねが、地位が低い認識につながっているのでしょうか。

正直に言えば、調達・購買部門の地位が低いのではありません。調達・購買部門で働く人が、他部門から事業への貢献度が低いとみられている、そう考えるのが妥当だと考えました。筆者が勤務した企業の調達・購買部門も、社内的な地位は決して高いとは言えませんでした。そんななかでも、他部門から信頼が厚く、サプライヤにも影響力を行使して、社業に貢献するバイヤーがいました。そんな優秀なバイヤーを10年以上観察した結果、調達・購買部門として他部門に対し貢献する。その結果、他部門にも影響力が生まれ、業務の好循環が生まれてきました。いうなれば、たまたま調達・購買部門に配属され、会社の命でサプライヤの顧客としての立場で仕事をしているものの、実態は全く顧客ではなかったのです。当たり前ですが、調達・購買部門では意外に難しい立ち振る舞いです。これまでに御紹介した内容を「そこまでやるべきもの」と感じてしまった場合、それはサプライヤの顧客の立場に甘んじてしまっているあかしです。サプライヤに対しては顧客の立場を演じなければならないのです。

<つづく>

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