指標はこれを見ろ! ~日本の景況的多様性(牧野直哉)

7月の有効求人倍率が発表されました。結果は、前月と同じ1.1倍。この数値は1992年以来22年ぶりの高水準です。詳細にみれば注視すべき点はたくさんあります。しかし、仕事を求める人が100人いるとすると、働き口が110人分になります。

このような状況は、われわれバイヤーにとって、好ましい面ばかりではありません。人的リソースの供給量よりも需要量が上回っている状態です。モノを買っていようと、サービスを購買していようと、コストには人件費が含まれています。このような求人倍率の上昇は、人件費の高騰に繋がります。それよりも、人的リソースが十分に確保できない場合は、欲しいモノやサービスが確保できない事態も想定しなければなりません。より早いタイミングで確保するか、より高い価格で確保するかといった対策を講じなければなりません。

今回ご紹介の指標は日本銀行が発表する「地域経済報告(さくらレポート)」です。日本を9つの地域に分けて、それぞれの地域における景気情勢に関するレポートです。最新の7月発表のレポートには、各地域の有効求人倍率の推移が、昨年4月以降の月次データが掲載されていました。

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上記グラフには、5月までのデータしか載っていません。6月の有効求人倍率は22年ぶりの高水準と報じられました。そのわずか一ヶ月前は、全国平均は限りなく1.1倍に近い数値です。しかし、地域ごとの数値は、

最大値:北陸  1.4倍
最小値:九州沖縄0.87倍

と、大きな差が存在します。100人の求職者に対して、北陸では140人分の就職先、それが九州沖縄では87人分となってしまうのです。その差は57人。実に大きな違いです。人手だけを判断基準にして、労働集約的な発注であれば、北陸ではサプライヤを探すのが難しいかもしれません。一方、九州では容易に好条件で発注できるかもしれません。そしてもう一つ、異なるデータをご参照ください。

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上記のグラフは、以前ご紹介した日銀短観(企業短期経済観測調査)の景況感DIの実績値の推移の、各地域ごとの数値をグラフ化したものです。今年の3月末まで消費税の駆け込み需要によって全体的に景況感は改善し、4月以降の反動減との構図だけでは語り尽くせない、業種ごとそして企業規模ごとに違いが読み取れるはずです。

こういった指標を見てゆくと、例えば有効求人倍率の高い地域にあるバイヤ企業が、低い地域のサプライヤへ発注すれば、事態が好転する可能性を感じられます。例えば、有効求人倍率の低い九州沖縄地方の都道府県では、積極的に地銀と連携した商談会の開催をおこなっています。

景気回復は、調達購買部門とバイヤにとっては、明らかな逆風です。需要の高まりによって、買い負ける可能性が高まります。従来よりも高い価格で確保できればまだ良し、供給量の不足により確保できない事態も想定しなければなりません。せっかくの需要の高まりで盛り上がる自社の営業部門に冷や水を浴びせかねない事態です。
こういった指標は、数値を読み取って、みずからの行動に役立てなければなりません。マスコミの全国平均の有効求人倍率ではわからない多様性が日本経済にはあるのです。その多様性を活用して、適切な調達購買活動を目指すのが、今われわれに求められているのです。

<了>

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