深センとこれからのメーカー(坂口孝則)
先日、中国の深センに仕事で行ってきました。iPhoneのアッセンブリーを行う鴻海があるなど有名です。しかし、同社に限らず、ハードウェアのスタートアップ(新興企業)に溢れています。
そのなかでも、有名なのはSEEEDでしょう。かつてはSeeed Studioでした。短期間で拡大している企業で、いまでは日本に支社も有しています。彼らはものづくりの支援企業です。プリント基板の作成を担っています。世界じゅうからオンラインで請け負うのですが、それがめちゃくちゃ小ロットに対応しています。しかも速いし早い。ウェブからオンラインデータをアップしてペイパルで払うだけです。
いわゆるインキュベーション拠点にあります。ふらっと立ち寄れます。
あまりに普通の立地で、近くの中国人に「おい、このSEEEDって会社はどこ」と訊いても、知りませんでした。このSEEEDが凄いのは、簡易性だけにはありません。基板のデータをオープンにしていい、と選択すると、他の人もそのデータを活用できることです。いわゆるオープンソース戦略ですね。
彼らは、アジャイルマニュファクチャリングセンターというマスカスタマイゼーション工場を有しています。面白いのが、「オープンパーツライブラリ」をもっていて、これは、基板に限らず、製造部品のストックを公開しています。これまで、個人がものづくりをしようとしても、大量調達の大企業には部品価格で勝ち目がありませんでした。しかし、SEEEDが大量に買っているから、これを使って安くものづくりをしろよ、というわけです。さらに、品切れを心配する必要もありません。
また写真を撮れなかったのですが、ドローン世界企業のDJIにもお邪魔しました。
また、深センのハイテックセンターには、中国じゅうから研究機関が集まっています。数年前まで、中国企業はR&Dができない、といわれてきました。しかしあと数年で激変するでしょう。シェアリング自転車が溢れ、バスはすべて電気自動車に変わっていました。さらにタクシーも大半が電気自動車化していました。
そのなかでも、SKYWORTH社の巨大なビルが圧巻です。この、どういう趣味をしているんだ、という形状。日本では、SKYWORTH社はほとんど知られていません。たぶん知っている人でも、テレビを作っている企業、という感じでしょうか。さらに知っている人は、「ああ、世界じゅうのテレビを受信できる機器を作っているところね」と思うかもしれません。たしかに、世界じゅうのテレビを有線LAN経由で受信できる機器を生産しています。なお、日本では受信自体が違反です。日本のアマゾンでも、買えなくなりました。深センでは販売されていましたが、自己責任でお願いします。訊いたら、8000円くらいでしたね。
また、中国に無数にある、インキュベーションセンター(SEEEDがあるところ以外)も、見学しました。廃墟みたいですが、古い学校などを改装して、そのなかに明日の鴻海やSEEED、ファーウェイを目指すベンチャーが、サービス開発に勤しんでいます。侃々諤々の議論のなかから、新たなメーカーが誕生するのでしょう。もちろん、大半は失敗するかもしれませんが、そのなかで数社でも、かつてのホンダや京セラのような企業が生まれるはずです。すごいなあ、という感想です。
ふらっと行くだけでも刺激を受けます。とくに知り合いがいない場合も、ツアーなどが企画されていますので行ってみる価値があります。なお深センには、秋葉原の30倍といわれる巨大な電子部品市場があります。もう、あまりのたくさんの人で賑わい、熱気を感じられました。
ということで、もしよかったら、ということで下記を勧めておきます。
DJIのストア→DJIのドローンを見られます
X.factory→深センにある巨大なインキュベーションセンター
深センの電気街→圧倒的な面積の電気街。
<了>