鬼軍曹論(牧野直哉)
先日、関東購買ネットワーク会に出席しました。スペシャルトークのテーマはこんな内容でした。
「組織マネジメント考~職場に鬼軍曹が・・・その時あなたは?~」
日系企業と外国企業、大企業と中小企業の組織に対する考え方の違いを交えながら、
購買としてあるべき組織の姿を語っていただきます。
(購買ネットワーク会HPより引用)
スペシャルトークは、とてもユニークなご経歴の論者が、ご自身のご経験を披露する内容でした。トークが終了し、ある出席者が「企業に鬼軍曹が必要かどうか」そんな質問をしました。すると50名強の出席者中、80%もの方が「必要」と回答されたのです。
私は、鬼軍曹は「必要ない」と考えています。私にとって典型的な「鬼軍曹」とは、映画「愛と青春の旅立ち」に登場する鬼教官のフォーリー軍曹です。厳しい訓練を経て、少尉に任官すると、教官であるフォーリー軍曹は、教え子たちに敬礼する。そんなシーンが思い出される映画です。映画の舞台は、海軍の士官養成学校でした。フォーリー軍曹は、候補生を徹底的にしごきます。その「しごき」の先にあるものは、相手の命を奪って、自分が生き残って得られる勝利です。
現代の企業活動に、軍隊組織の活動にまつわる言葉が使用されています。戦略や戦術、サプライチェーンの分野では、ロジスティックスなどは、戦争にいかにして勝ち抜くのかを考える上で編み出された考え方であり言葉です。しかし、企業は軍隊ではありません。敵の命を奪う必要もない。従い、理不尽な厳しさを持つ「鬼軍曹」は、調達購買部門に不要であるはずです。
先ほどご紹介した「愛と青春の旅立ち」でも、鬼軍曹は後進の指導を担っていました。「鬼」は怖い、恐怖です。後進の指導に「恐怖」は不要です。そして「恐怖」と「厳しさ」は別です。「恐怖」とは受け手の印象ですから、厳しい指導によって受け手が恐怖を覚える事象は止められません。しかし、指導を行なう側は「恐怖」を指導手法に使うべきではないのです。
<了>