調達・購買担当者の意識改革ステップ・パート7「交渉」その2(坂口孝則)

・交渉とは

解説:交渉とは、教科書的には「当事者双方が、ある限られたリソースをめぐって、ある種の合意に到達しようとするプロセス」です。調達・購買業務は、多くの場合、サプライヤから一度だけ調達しておしまいではなく、中長期関係を前提としています。したがって、競争的な側面ではなく、協調的な側面も有します。概念的にはリソースを拡大し、両社両得になる創造的妥結点を見つけねばなりません。そのように、本来は交渉を通じてWin-Winの関係構築を目指すべきです。ただ、どうしても双方が合意に至らない場合、あるいは、リソースが拡大せずパイを取り合うような場合も、たしかにあります。そのような際には、No Deal(取引しない選択肢)が、両社にとって最善策のケースもあると覚えておきましょう。

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・交渉準備シート作成つづき

意識改革のために:前回、交渉シートを提示し、その記載方法について述べました。バックナンバーをご参照ください。また、交渉シートは再掲しておきます( http://goo.gl/4GM31 )。

さて、最後にこの( http://goo.gl/4GM31 )にある、

①問題と目標

②状況分析

③取引項目・選択肢

④結論・方向性

の④をまとめます。これは、これまで検討した結果、結局、どんな交渉をすれば良いか、あるいは相手にどんな提案をすればよいかです。

可能ならば、もっとも良いのは、相手のニーズをつかんだうえで、そのニーズに合致するような提案(なり交渉)を行うことです。これまで、①~③の一部で、相手を分析してきました。そのうえで、どんな結論・方向性を導けば良いのでしょうか。

もちろん、①~③までをしっかり分析すれば、自動的に④が導かれることもあります。しかし、それでも④がまだ自信を持てない場合は、次のSCQA分析を実施しましょう。

・SCQA分析とは

SCQA分析とは、「Situation」「Complication」「Question」「Answer」の頭文字をとったものです。また、SCQA分析は、相手を分析するときに使います。自分ではなく、相手です。

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それぞれの日本語訳は上図のとおりです。ほとんどの状況はこのSCQAに当てはまります。乱暴な説明ですが、

「Situation」:これまでは、こう上手くやっていた。平常時が続いていた。
「Complication」:しかし、やっかいな出来事が起きた。あるいは、やっかいなことになりそうだ。
「Question」:そのために、どういうことを考えるべきか。
「Answer」:こうすれば、問題は解決するよ。

適切かどうかはおいておいて、例を三つほど考えてみます。

桃太郎の場合。

「Situation」:おじいさんとおばあさんは平穏な生活を続けていた。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいった。
「Complication」:すると、川から大きな桃が流れてきた。
「Question」:この桃を取るべきか?
「Answer」:川から、桃を取るべきです。

これほど、極端ではなくても、売上に悩むメーカーの場合はどうでしょうか。

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あなたが、この相手に交渉しに行くとしましょう。そのときの鉄則は、最後のA(Answer)が、あなたの交渉提案と合致していることです。あなたが、マーケティングコンサルタントだったり、あるいは広告代理店だったりと、仮定します。そんなときに、単純に交渉するのではなく、そして、単純に自社を売り込むのではなく、SCQAにしたがって説明したほうが、交渉を有利に進められます。

そのために、SCQA分析があります。もちろん、相手を分析するのですから、QやAは仮説にすぎないかもしれません。QやAは、できうるかぎり、多くを用意しておきましょう。でも、仮説であっても、まったく無策でやるよりも、仮設立ててやったほうが良いに決まっています。

それが、( http://goo.gl/4GM31 )の④結論・方向性につながっていきます。SCQA分析は、最初はどうかな……と思う方法かもしれません。ただ、コンサルティング会社でも使われているツールです。いちど、こまった交渉に試用してみてください。

・いざ、交渉!に入るときに

では、いよいよ交渉に入ります。私は交渉を行う際の前提として、次を考えています。

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前回の連載と重複するところがありますので、上の3点のみをご説明します。

・「優位な前提をあらかじめ作っておく」:交渉のきっかけが、「材料が高騰していて、いかに価格を値上するかが問題なんですよ」と雰囲気を作られてしまうと、サプライヤ優位です。それにたいして、「アジア勢との価格競争が激しく、いかにコストを抑えるかが問題だ」とこちらから交渉前提を作ってしまうと、バイヤー優位になります。調達・購買担当者が考えておくべきは、まさにこの前提づくりです。サプライヤと話すとき、どんなトピックで会話をはじめるか。注意しておきましょう。

・「議題(アジェンダ)はこちらで用意し、提示する」:その交渉では、何を話すのか、何を決めるのか。出たとこ勝負ではいけません。必ずこちらが用意して、それにそって会話すべきです。そうすれば、交渉の方向を自ら操作できます。気づいたらいつの間にかサプライヤのペースになってしまい、交渉がいらぬところに進んでしまった経験はありませんか? そんなケースを避けるためにも、議題は(簡単なメモでも構わないので)こちらが提示しましょう。

・「議事録はこちらで書く」:すぐれたコンサルタントは、クライアントの打ち合わせ時に、かならず自分で議事録を書きます。なんだかんだいいながら、後世に残るのは議事録のみです。そして、議事録は、かならず書いた側に有利に働きます。当然ですが、微妙なニュアンスの会話について、自分が不利になるような議事録を作る人はいません。それ以降の備忘録としても、議事録を作るものは交渉を制する、です。

(この連載、まだ続きます)

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