連載「調達・購買戦略入門」(坂口孝則)

調達・購買の戦略を連載しています。

今回は、年度コスト低減戦略についてお話します。

・コストが下がる分類

コスト削減は製造業において必須です。私がよく出すたとえでは、1950年には缶ビールはスズメッキで73グラムでしたが、1973年にはアルミになり21グラムに激変しました。いまは13グラムです。なぜ安価にするのかというと、もちろん競合他社にたいして価格面で優位性を保ちたいからです。実際に、この140年で一般的なモノの価値は、毎年1%ずつ下がっています。

そこで大きく区分してみましょう。まず自社の最終製品コストが安価になる場合というのを、あえて二つにわけます。

・設計の仕様変更によるもの
・調達コストの低減によるもの

まず設計が仕様変更することによって下がる場合です。使用している材料を減らしたり、あるいは新技術によって工法が変わったり、使用している部品が変わったりする場合です。そして、多くの読者の仕事であるように、調達品の価格が下がった場合です。

前者は調達部門が努力したというよりも、設計部門が努力した結果ですから、これはあまり調達のコスト削減としてはカウントしません。もちろん市況に比べて安く買っている場合などはカウントしてもいいかもしれません。ここではサプライヤに対して、継続調達品のコスト削減を、どのような観点から進めればいいかをお話します。

・コストが下がる理由

ここで、サプライヤの調達品価格が下がる理由を区分してみます。

・材料費:これは使用する材料の量が減る場合や、あるいは、市況の変動によって材料が下がる場合です。特に使用量に関しては、ある一定の根拠があります。というのも、同じ物を生産し続けていれば、歩留まりが向上するのは当然のことだからです(端材が少なくなる)。

・労務費:ライン工程の変更によって時間が短縮されるケースがあります。そして全く同じ作業をしていたとしても、作業者の熟練によって価格が下がる場合があります。

・設備:同じ設備加工をしていたとしても、オペレーター(すなわち作業者のことですが)のティーチング等の加工時間が短くなることが考えられます。そして、これが最も大きいのですが、設備の減価償却が下がります。減価償却費とは、設備のコストを、減価償却費という形で、経理上、数年にわたって分割計上することが求められています。何年かは、設備によってことなります。これを耐用年数と呼びますが、ひとつの参考として国税のURLをご覧ください。一定期間を過ぎると、減価償却費はなくなります。減価償却費は、毎年少しずつなくなっていくのです。これはサプライヤの努力というよりも会計上の理由としてコストが下がってきます。

調達費:サプライヤがさらにどこかのサプライヤから買っている価格です。これも上記と同じような理由で、あるいは大量一括仕入れによって価格が下がる場合があります。

金型費:設備とほぼ同じ意味ですが、金型を使う場合は2年後に減価償却が終わりますので生産コストとしては下がる一因となります。

・労務単価の熟練効果

ところで、この中で最もわかりやすいのが、労働者の作業がどれくらい効率化していくか、ということなります。目安としては、まずサプライヤの決算書を取り寄せて、製造原価の中にどれくらいの比率で労務費あるいは外注費が入ってるか確認しておきましょう。

例えば100円の製品があって、その労務費がどれくらいかなと計算するときに一つの目安になります。すなわち1億円の売り上げがあるサプライヤの労務費がもし2000万円だとします。乱暴ですが、概算としては100円の製品価格の20円ぐらいが労務費だと計算ができます。

ではその20円はどれくらい下がるのでしょうか? これ以降は、製品によって異なるとしかいえないため、乱暴な議論となります。あらかじめご容赦ください。私は、大量生産のメーカーと、単品製品のメーカーを、どちらも経験しました。自動車と重電です。

まず前者でいえば、年間で5%くらいではないでしょうか。つまり20円が5%の改善で1円相当が安くなります。その他の低減策を含めて、2%くらい。大量生産の場合はサプライヤもかなり、工程を練っているので、あまり莫大な改善効果はありません。しかし、よくトヨタ自動車などが、サプライヤに1~2%の改善を依頼した、と報じられますが、私の経験からもさほど離れたものではありません。

しかし、少量生産、微量生産の場合は、どうではありません。生産個数が増えれば、やはり効果はあります(もちろんそれは調達初期が高い、ということになるかもしれませんが)。そのときに重要となるのは、累積生産量です。つまり、作業者がそれまでに何個を生産したことがあるかが熟練には重要なのです。目安は次の通りです。

・累積生産量が倍になればコスト(「労務費」は0.8倍になる
・累積生産量が4倍になればコストは0.8×0.8=0.64倍になる
・累積生産量が8倍になればコストは0.8×0.8×0.8=0.512倍になる

今回もファイルをご紹介します。

http://www.future-procurement.com/keiken.xlsx

「経験直線シミュレータ」で、解説も書いておきました。黄色箇所を入力してください。「低減率設定」のデフォルトは20%です。

少量生産品で100円というのはあまりに安いですから、100万円としておきましょう。すると労務費は20万円。それが、上記のとおり計算を当てはめることができます。

・累積生産量が倍になればコスト(「労務費」は0.8倍になる→16万円
・累積生産量が4倍になればコストは0.8×0.8=0.64倍になる→12万8千円
・累積生産量が8倍になればコストは0.8×0.8×0.8=0.512倍になる→10万2400円

これくらいの効果が、私の経験からも合致します。あとはみなさんの感覚で調整してみてください。

<つづく>

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい